捕って、盗って。 ページ19
藤浪side
嫌な流れやった。
(あかん、ダメや)
投げた瞬間そう思ったし、思った通り……になるはずやった。福留さんが打ち損じたこともあるやろうけど、セカンドを抜けたと思った打球はAが横っ飛びで捕球、それからすぐ立ち上がってファーストに送球。飛び出しとった植田は戻れずに、結果ゲッツ―。
あいつに助けられた。
せやけど、練習試合やのにこんなに崩れる自分がショック過ぎて。2回で交代の予定やったけど、あいつがもし捕ってへんかったら2回もたずに交代されとったかもしらん。
チームメイトはAに駆け寄って、俺のミスに触れへんように声をかけとる。
こんな時まで気ぃ使わせてどうすんねん。
悔しくて、情けなくて。
ベンチに戻って、髪をグシャグシャしながら静かに俯いた。
なんでやろ、なにがあったん。
俺、いつからこうなん?
(もう、いやや)
堪えきれんかったため息を漏らしたと同時、隣に誰かが座る気配。
「フジナミく〜ん」
それから馴れ馴れしく肩に置かれる手。
今はそれを払いのける気も起らん。
「なんや……」
「ため息ついたら幸せ逃げちゃうんでしょ」
「知らんわ」
もう。
なんて声がしたと思ったら。
「何をそんなに抱え込んじゃってるワケ?」
肩に置かれとったはずの手が、さらりさらりと俺の頭を撫でて。
「いつもの生意気なお口はどこいっちゃったのかなぁ? 太郎くーん?」
「なっ、太郎ちゃうわ!」
手を振りほどきながら顔を上げると、してやったり顔のA。
「っ、お前マジで腹立つ!」
「え? 可愛いって? ありがとう」
「言うてへんわ!一言も!」
「照れなくていいのよ? あ!そうだ私、次の打席出塁するわね。それで盗塁も成功させるから」
そう言って自信満々に笑って見せて、ベンチ前にいる中谷さんの隣に並んだ。
その背中が、なんか眩しく見えて。
「なんやねんほんま……。ゴリラのくせに」
これがあいつなりの元気付けやったって事に気ぃついたのも、それで自分がちょっと気ぃ晴れてんのも。
なんか素直になれへんねん。
そうして時間は過ぎて。
あいつは、Aは。
俺に言った通り2打席目ヒットで出塁して、1球目で盗塁を決めた。
多分、今日のMVPはあいつやな。
二塁上のあいつの顔には、相変わらず自信満々の笑みが浮かんどる。
(あ、目ぇあった)
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優希(プロフ) - softさん» 私、虎の勝ち負けで体調変わるから。負け続けた時、熱だしたからね。今は勝ってるから、出てないけど。応援するしかないよ。 (2018年5月26日 13時) (レス) id: 250acda05a (このIDを非表示/違反報告)
soft(プロフ) - 優希さん» 最近負け続きだったからちょっと悲しかったけど(´・ω・`) 応援するしかないよね! (2018年5月26日 13時) (レス) id: 94ac0ee185 (このIDを非表示/違反報告)
優希(プロフ) - softさん» そうだね、これからもずっと応援しよう。勝っても、負けても、虎命だから。 (2018年5月13日 9時) (レス) id: 250acda05a (このIDを非表示/違反報告)
soft(プロフ) - 優希さん» うん! 阪神タイガースもずっと応援しようね! (2018年5月13日 0時) (レス) id: 94ac0ee185 (このIDを非表示/違反報告)
優希(プロフ) - softさん» お久し振りです、お互い体に気をつけて頑張ろうね。 (2018年5月12日 23時) (レス) id: 250acda05a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:soft | 作成日時:2017年7月27日 0時