食わず嫌いな君と僕

赤星だけに紅組ってか？やかましいわ！ ページ17

"1番 セカンド 赤星"



｢はいはーい……っと｣



ネクストから打席へと向かう。私が立つのは左打席。投げるのは右だから、叔父さんとお揃いだ。
と言っても、叔父さんがプレーしてるのは映像でしか見た事ないけどね。


｢よろしくお願いします｣


打席に入る前の一礼は忘れないように。


うん、できた！



相手ピッチャーは白組の望月くん。


キャッチャーは坂本さん。



一応昨日寝ずに全投手の映像と全キャッチャーの配球割合とか調べといたからいけるわよね。



緊張と興奮で、バクバク動く心臓がうるさい。




(いやぁー！ これこれ！ この感じ！ 大好き)



望月くんが構える。




さぁ！こい！




一球目は何が来ても振ろうと思っていたから。




バットがしなって。



手のひらに伝わる感触。




(あぁ、間に合うかしら)




少し詰まった打球は三遊間へ。


サードは大山くん、ショートは植田くん。



(いける、)



ベースを駆け抜けたのと、ボールが収まった音はほぼ同時だった。




｢アウトっ｣



｢あーっ！ダメだったかぁ……｣



足には自信あるんだけど今回は残念。肩をすくめてベンチの方へ歩き出す。



｢足速すぎん！？｣
｢Ahh!!? 中谷さん！？でしたっけ！？いきなり大きな声出さないで下さいよ！ビックリするでしょ！｣
｢いやこっちのセリフな！｣

声をかけられて周りを見ると、ベンチの中だけじゃなくて守備についている内野陣もこっちを見ていた。

｢なんなの、どういう状況……｣
｢あれがギリアウトはやばい！ 普通なら2歩前でアウトのやつ！｣
｢え……あ、｣


もしかしてこれ、私の大好きなシチュエーションじゃない？



腰に手を当ててから、前を向いて、



今日も鏡の前で丁寧に整えた眉の片方を上げる。




ニヤリと笑みを浮かべながら。




｢レッドスターの血は伊達じゃないのよ｣



そしてウィンク。



(やば、私めちゃくちゃキマッてない！？ )



｢さ！どうぞ試合！ほらほら！｣




んー！
やっぱり今日は最っ高の野球日和ね！


＿＿＿＿＿

｢し、晋太郎、今俺らは何を見せられたんだ｣
｢青柳さん、あれはゴリラの奇行っす｣
｢ゴリラ！？ お前は正気か！ どこがゴリラなんだ！女神だろ！！！｣
｢おーい、晋太郎。ええかげんゴリラ呼びはやめーや。赤星呼びできんのはまだ分かるけど｣
｢そーなんすよ、赤星なんて呼び捨て出来へんやないですか、大先輩呼び捨てしとるみたいやし｣

まあ、1回だけ名前でよんだけどな。

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