日常2 ページ5
闇の中を走るのは嫌いではない。
"作戦通りだ"
「了解」
「しくじって消えても善いんだぜ、放浪者!」
"中也こそ、敵の異能で苦しみながら死んで。"
今夜は久々にこの二人との任務。
まぁ双黒と呼ばれる位のコンビネーションを誇る彼らなので、いつも通りの応酬は気にしない。
「予想通り、敵は分かれて行動してる。私は裏切り者を遣るから、其方はよろしくね。」
「おう、また後でな。」
今回は、マフィアの傘下に居ながら我々の情報を流し、敵対組織と結託した裏切り者の排除、及び該当組織の殲滅である。
裏切り者は情報系のインテリ集団。恐らく、善い所取りをしようとしたのだろうが太宰くんや首領は騙せなかったようだ。
重力を操り、体術にも長けている中原くんには敵対組織の方を任せ、私はインテリ集団の方へ向かう。私は肉体派ではないので、適材適所ということだ。
「来たな、お前だけか。」
「貴方たちの相手はね。」
着いたのはとあるビルの一室。所せましとコンピューターが並んでおり、情報を扱う彼ららしい部屋であった。窓が派手に割れており、争った形跡が見られる。
その中心にいるのは、裏切り者たちと捕らえられた太宰くん。
「俺たちを捕まえるのにこんなガキ共を差し向けるとは、矢張新しい首領様の人徳ってものは薄いらしい!」
今の首領には反発する輩がいるとは聞いていた。しかし、この一年で状況は変わりつつある。それでもまだ、こうした裏切りは後を絶たない。
「徹底的に、とはこういうことか。」
「お嬢ちゃんのお仲間は捕らえた。どうする!」
この人たちは、そこで捕らえられた人物があの太宰治だということを知らないのだろうか。仮に私を倒しても彼らに命はない。
「うーん、捕まっているっていうのは初耳なんだけど。」
「こっちの方が絵になるでしょ?早く助けてよ。」
軽口を叩く太宰くんに溜息が出る。
「何を呑気に話している!状況が分かっているのか!!」
「解ってるよ、その人を離してほしいなァ。」
ゆっくりと彼らに近づく。
割れた窓から風が吹き込み頬を撫でる。
「お前が代わりになるとでも云うのか。」
「それもいいけどね。」
「ダメだよ、A。」
武器も構えず、近づく私に流石に警戒したのか全員の視線が刺さる。
刹那、強い風が私の長い前髪を噴き上げ、狭かった視界を広めた。
「赤眼…!まさか!」
――――――異能力、生ひ立ちの歌
さァ、地獄を視ようじゃァないか。
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作者名:りあ | 作成日時:2018年5月19日 3時