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カ「ヨヅミを脅迫の道具にされ
誰の仕業なのか突き止めた時、もう、そうするしかないだろうかと考えて─────…
けれど…どうしても出来ませんでした」
エ「……それは、そうだ。
カゲヤどのにはヨヅミどのがいるんだから」
カ「…そして、昔
助けて下さった方がいたからです。その方にはいつか、ご恩をお返ししたいと思っていました。
ですが私は結局、他人が囁く言葉通りの人間として生きてきてしまった」
暗い表情をするカゲヤさんに
少しだけ紅茶が揺れた
カ「否定しながら生きるより、噂を真実にしてしまえばいいと。それで済むなら仕事を選んで人を惑わして嘘を重ねてきました
そんな人間にはならず、強く生きることがきっと
─────…あなたにお返し出来る、ただ一つのことであったでしょうに」
エ「…………そう、願ったけど……」
カ「やっぱり。…ごめんなさいエイセツ様」
エ「いいんだ、自分の知る自分を頼る難しさは…俺は俺で知ってるから」
カ「エイセツ様。恩返しは叶いませんでしたけど、聞いて下さいますか」
エ「……なんでも聞くよ」
カ「エイセツ様のお陰です。私が…
──────…私がどれだけ愚かでも、家族を思うと幸せでいられて。
最後に踏みとどまることが出来たのは
ご自分の立場が悪くなることを顧みず、私の為を思って下さった」
───────エイセツ様がいたからです
あの日の、光景の事を…
カ「────すぐ側にいる人でさえ…
守ることはとても難しいですけれど、遠くの誰かを支えていることはあるんですよ。
…あの日出会って
うちに庭があるよと笑って下さったことを
心から感謝しています。エイセツ様」
その言葉にエイセツ様は目元を手で覆い、下を向きながら「…そっか」と零した
その声は、とても綺麗で
──────安心したかのような声だった
カ「こんな私と仲良くして下さって、優しくしてくれたAさんにも…
心から感謝しています」
貴「─────…うん」
──────私もです
紅茶が無くなった頃にエイセツ様は立ち上がった
エ「あの頃、カゲヤどのと一緒に働いてたみんな。今もうちに居るよ
会いたがっているから会っていきなよ」
カ「…まあ。ですが…」
エ「何年ごしでも
会えるっていうのはありがたい」
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作者名:かっちゃん | 作成日時:2023年5月5日 16時