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校舎の端っこ。

なかなかこんなところに来る機会もないから少しワクワク……なんて。

｢するわけない……｣

長ーいため息を一つ吐き出して、見上げた先には『生徒会室』の看板。手書きっぽいのがまた独特な雰囲気を醸し出している。

中を覗いても誰かがいる様子はない。電気は消えているし人影もゼロ。カーテンも閉じられてる。

ああ、帰りたい。

至急お越しくださいとか言っておいて本人達いないって何事なの。もうやだ、帰りたい。

背負ってたリュックを下ろして、壁にもたれかかる。無駄に進学校なせいで荷物が多すぎるんだこの高校。

本日何度目かわからないため息が零れたところで、やっと人の気配。

｢……松永Aさん、だね｣

振り向けば、女の子みたいに綺麗な顔の男子生徒。その声から、例の放送の主が彼だと知る。確か、副会長。

｢……呼び出してまで、なんの御用でしょうか｣
｢はは、そんなに睨まないでよ｣

肩をすくめて笑ってる。
だけど目が、笑ってない。
品定めされてる、と本能的に感じ取る。
さっさと終わらせないとペースに飲み込まれかねない。それだけは避けたい。

けどやっぱりこの副会長さんは、『影の生徒会長』と呼ばれるだけある。私に返答の隙を与えてくれない。

私が頭の中でシナリオを組み立てている間に、彼が堂々と口を開く。

ああどうしよう。勝てないかも。

｢多分もう勘づいてると思うんだけど、君に生徒会に入って欲しくて。今日はその勧誘と思ってくれたらいいよ｣

なるほど。『誘われる』って事だけを察していると思われたのか。

なめられてる。けどわざと掠めてる気もする。

頭痛い。

｢……昨日、会計の方にもお断りさせて頂いたんですがあれはオーディションでした？｣

綺麗な丸い目が一層丸くなった。図星……だけどこの反応はわざとかな。食えない。

｢わかってるなら話は早いね。でもそれならどうしてここまで来たの？誘われることが確定してたのに｣
｢逃げられないよう道を塞いだのはどなたですか｣
｢おっと、それもバレてるのか｣
｢見事でしたよ、あの放送。クラス全員の敵意を頂きました｣

その様子を想像したのか吹き出して笑っている。ああ、本当に勘弁して欲しい。

うちの生徒会は、本当に有名で、本当にとんでもないんだから。