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……というか。

見たくないなら見えなくすれば。
聞きたくないなら聞こえなくすれば。

それで済む話じゃないかと気づいた私はすぐさま巾着からミュージックプレイヤーを取り出した。メガネも外してケースに戻す。

あーボヤける。なんにも見えない。
こんなにもド近眼に感謝したことが今まであっただろうか、いやない。
耳元ではハイテンションのアニメキャラが大はしゃぎで歌いまくってる。

悪口も聞こえない。遠くも見えない。
悪い気分がすーっと落ち着いていく。

……なんか逃げたみたいでちょっと気に入らないけど、まあ、うん。いいや別に。

夏休みの宿題もやらなきゃいけないしなぁ。なんで来ないんだあの三人。

はあ、と息をついたところで突然外されたイヤホン。何事かと目線を上げると。

……男の人？が……二人……？

駄目だ、ボヤけすぎて全然見えない、誰よ。

｢無視ってひどー｣

ん？知り合い？……少なくとも生徒会の三人じゃない。

｢ね、キミ一人？｣
｢良かったら俺らと遊ばない？｣

……これはもしやナンパとかいう奴ですか。

来ない人を待つ主人公がナンパされるとか少女漫画か。やめて、そんな大役務められない。

とりあえずどんな顔かな、という知的好奇心を擽られて目を細めると｢睨まないでよー｣と笑われた。睨んでないよ、目が悪いんだよ。

まあ眼鏡出せばいいだけの話なんだけどさ。

どうしよっかなー逃げようかなーなんて他人事のように考えてると、ガシッと掴まれる右腕。

え、うそ、実力行使？と軽く焦る。

だけどその掴む腕は後ろから伸びてて。

｢Aちゃん、お待たせ｣

ああ、この声は我らが生徒会長か、と。

これまた他人事みたいに考えた。