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午前の授業が終わって、櫻井先輩の命令通りに生徒会室へ向かう。

教室でも被害は無さそうだけど、命令に背いた時の櫻井先輩が怖いから諦めた。素直に従っておいた方が良さそう。

……いやぁそれにしても。

｢あの子昨日の……｣
｢……生徒会入ったって｣

……聞こえる聞こえる。まあ、聞こえる。

『どうしてあの子が』
『なんで生徒会に』
『ファンクラブにも入ってないのに』

今日一日だけであんなにもバリエーション豊かな言葉が聴けるのか、と軽く呆れる。

ファンクラブに入ってないから生徒会に呼ばれたんですよ、なんて言ったらあの子達卒倒するじゃなかろうか。生徒会に興味無い女子急増しそう。

｢オタクなんだって……｣
｢うわきもー……｣

またかよ。

地獄耳って程でもないけど、それなりに性能の良い私の耳は聞きたくないものまでガッツリ拾ってくれちゃって。

｢Aちゃーん！｣と呼ばれていることに、また気が付かなくて。

｢Aちゃん！｣
｢ぅおっ……て相葉くん｣

こうやってまた、変な声が出る。

｢何回も呼んだのにー！｣
｢えぇ、ごめん、全然全く気が付かなかった｣

ふふ、と冗談交じりに言えば、｢ひどー！｣なんて全然酷いと思ってなさそうな返事が返ってきた。

あーこりゃモテるわ……癒しキャラだわ……元気なタイプの癒しだわ……可愛い……。

｢……相葉くんて可愛いよね｣
｢うん!?どうしたのいきなりー！俺可愛い？｣
｢可愛い可愛い｣
｢うーんかっこいいの方が嬉しいんだけどなぁ｣

なんて会話をしていると。

｢……やっぱり付き合ってるんじゃ｣
｢やだぁ……｣

……ため息が、1つ。

もうこうなったら相葉くんとの話は一旦打ち切りだ。｢Aちゃん？｣とのぞき込んでくる彼に曖昧に微笑んで前を向いた。

相葉くんだからこの程度で済むんだろうなぁ、なんて、呑気に考えながら。