深夜には平凡な議論を -sgi ページ1
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ベッドに入り電気を消して、おやすみを言いたくなる深夜1時前。
昼間うとうとしてしまったせいで眠れない私の隣で、駿貴は何やらポチポチとゲームをしながら私のどうでもいい話に相槌を打っている。
集中すると画面しか見えなくなる私とは大違いで、ゲームをしながらでも問題なく会話ができるのは、やっぱり頭の処理能力の差なのかな。
「ねえ駿貴」
「あいよ」
「ひみつ道具1個貰えるなら何がいい?」
「え゛」
何の気無しに訊いたつもりが、駿貴は持っていたスマホを置いて真剣な顔をする。豆電球のオレンジの明かりが、駿貴の横顔を照らして格好良い。
ふざけて笑っている駿貴が好きだけど、こうして真面目に考えている顔はもっと好き。
考えている内容は全然大した事じゃないのに。
「ひみつ道具って、いわゆる四次元ポケットから出てくるやつでよろしい?」
「うんそう」
「うわー…実はね、ちゃんと考えたことないのよ」
ちょっと待ってちょっと待って、と頭を抱えられて、別にそんな真剣に考えなくてもいいよなんて今更言えずに答えを少し待ってみる。
「いや、そうなの。それは浅はかなりけりだから…あー」
独り言で議論を始める駿貴を急かす。
「はやく」
「そんなん言うならAも欲しいの言うてみなさいよ」
特に理由もなく尋ねたことだから、私の答えも特に定まってないんだけど。
「うーん、石ころぼうしとかかな」
「またニッチなところを…どんな道具だかピンとこんわ」
「石ころ帽子はね、被ると石ころみたいに目立たなくなるの」
あーはいはい、あったねと笑われる。
むっと膨らませた頬を簡単に大きな手でつままれた。
「石ころになって何すんの」
「駿貴のあとつけてびっくりさせる」
「気付くっしょ」
「石ころだから気付かないの」
ちょい待ちと体ごとこっちを向かれ、ばっちりと目が合う。
「いやどれだけAの事見てると思ってるの」
こーんなんよ、と顔を近づけられ、恥ずかしくて目を逸らしてしまった。
「今更石ころになったくらいで見失わんでしょ。絶対気付く自信あるわ」
また頬をつかまれて、無理やり目を合わせられる。
ね、と念押しされればこくこくと頷くことしかできない。
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作者名:せの | 作成日時:2020年8月17日 2時