For the boys... (ページ14)

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[side by you]

CN「Aのライムソルトも一口頂戴」

『ん』

CN「俺のピスタチオも旨いよ」

『もちろんもらう』

チャニョルとのデートは結構楽しかった。

若手のデザイナー達が店を構える服屋の通り、
住宅街の真ん中にある公園にポツンと生える大木、
強面のおじさんがやってる手作りジェラートの店。

ランチはチャニョルおすすめのインドカレー屋で
焼きたてのナンを頬張った。

CN「誰のCD買うの？」

『うーん、久々に聞きたくなっただけなんだけどね』

夕方近くになった頃、CDショップの洋楽フロアで
棚に書かれてるアルファベットを辿りながら
お目当てのCDを探す。

『あった！』

CN「Jeff Buckley？誰？」

『アメリカのシンガーソングライターだよ。
両親が好きでさ、昔良く車で聞いたんだ…』

会計を済ませ車に戻ると、先に行っていたチャニョルが
どこかに電話していた。

CN「A、映画見に行こうよ」

『あれ？仕事は？』

CN「いいからいいから」

チャニョルの運転で向かった先は、広い駐車場に
大きなスクリーンがあるドライブインシアターだった。

CN「まだ映画まで時間あるから、さっきのCD聞きたい」

『お、いいよー』

プレーヤーにCDをスライドさせると、
懐かしい音が流れ出した。

後部座席に移動すると２人で凭れあって座る。

CN「ギターすごいな」

『うん…子供の頃は良くわかんなかったけどね』

しばらくして、一瞬の浅い呼吸音の後に
静かなギターの音色が響きだす。

"…It's a cold and it's a broken hallelujah
Hallelujah… Hallelujah…"

『この曲…"Hallelujah"が一番好き…』

やっぱり…涙を堪えることはできなくて…

チャニョルは何も言わなかったけど、
優しく私の肩を抱いてくれた。

寂しかったんだ…自分は。

でもそれを言葉や態度に出してしまったら
もう引き返せない気がして…

CN「A」

呼ばれて顔を上げれば、温かい指先で涙を拭ってくれた
チャニョルの優しい瞳から逃げることはできなかった。

………
……
…

今朝、賑やかに朝食を食べていた部屋には
寂しさを埋め合う２人の熱い吐息だけになっていて。

チャニョルの揺れる肩越しにボンヤリと見えるのは、
天窓から覗く三日月。

『んっ…やだ、あぁ…』

CN「A、だ、大丈夫だか、ら、んっ」

『あっ…』

薄れる意識のなかで…
変わらずそこにいる三日月に、この不埒な行為を
見逃してほしいと静かに願った。