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[side by Chanyeol]
"お前のギター…何か足んないだよなぁ"
週末に馴染みのライブバーで演奏が終わったあと、
アンプを片付けていたらドラムの奴から言われた言葉。
言った本人は一晩寝れば忘れるくらいの何てことない
一言だったんだろうけど…
楽しみだった打上げ(ファンの女の子が何人か来る)への
意欲が削がれるには十分だった。
少し調子が悪いと伝えてメンバーを見送ってから
店の奥でしばらくギターを爪弾いてると、
この時間には珍しくコーヒーの香りが漂ってきた。
「帰るか…」
マスターに声かけようとカウンターを覗くと、
一人でポツンと座っていた客らしき女性は
なぜか今にも泣き出しそうで…。
マスター「はい、コーヒー。熱いから気をつけて」
渡されたコーヒーの湯気が彼女の顔を包むと
その温かさに安心したのか、やっと表情が緩んだ。
好奇心、だったと思う。
音楽をやってるからといって、そう毎日に刺激的な事や
新しい事が起きるわけでもないし。
先月女に捨てられてから、ちと人恋しいっていうのも
俺が彼女に声をかける動機に拍車をかけていた。
最初は驚いてたけど、元々人懐こい性格もあってか
食事しているうちに彼女も笑顔を見せてくれて。
Aって名前、色々あって車で旅に出てること、
少し離れた所にあるホテルに数日滞在することを
話してくれた。
「あれ？Aは？」
マスター「おー、もう金払って店出たぞ。
何だチャニョル、珍しくフラれたかw」
「うっせ、また週末ね」
慌ててギターケースを抱えて店のドアを開ければ、
空を見上げてるAがまだそこにいた。
運賃代わりにやった車内でのアコースティックライブで
さりげないけど、凄く嬉しい褒め言葉をくれたAと
まだ別れたくなくて強引に仕掛けてみる。
強盗の話で怖がらせて申し訳ないと思ったけど、
それなら尚更一人にはできなくて、諦めたように
車を出した時は心の中でガッツポーズをした。
………
……
…
風呂から上がって備え付けのバスローブを纏うと、
Aがすでに横になってるベッドのそばへ
ギターを持って腰掛ける。
"You've got to take me home, you silly girl
and put your arms around me…"
『…優しいメロディだね』
「最近マスターに教わったんだ。
Tom Waitsっていう酔いどれ詩人の歌なんだって」
『もっと声、聞かせ、て…』
数分後、Aの穏やかな寝顔を確認すると、
その隣にそっと横になった。
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作者名：コナツ | 作成日時：2013年11月20日 1時
