27話 ページ27
『クラゲって可愛くないですか?なんかこう、ふわふわしてて』
「あんま考えたこと無かったなぁ…まぁ確かに可愛いか」
先程までより一層暗く、幻想的な光に包まれるのはクラゲの展示エリア。
たまたま人も1人とおらず、閉ざされた空間に2人。
小さなクラゲがヒラヒラと水中を舞っている、その様子を津田さんはじっくりと見ていた。
「ね、これ見て。ほら」
あまり近いのも、と思って少し間を空けていたが津田さんに言われるまま私も近づき顔を寄せる。
…もう遅いが、かなりの顔の近さに気が気じゃない。
「Aちゃん、…してもええ?」
『…え?なにを』
何をですか、という言葉は遮られ、気づいた時には唇に柔らかい感覚が残っているだけだった。
「…ごめん、しちゃった」
頭を少しでも動かせばまた、そんな距離で津田さんが呟く。
『っ…え、』
「キス、した」
あまり理解が追いついていない私に津田さんは教えるようにゆっくりと言う。理解した途端、みるみる内に顔が熱くなるのを感じた私は顔を俯かせた。
『津田さん…』
「んー?」
『狡いです』
「せやろ、俺狡い大人やもん」
ふふん、と津田さんは自慢げに笑って、私の頬を人差し指でスっと撫でる。ほんの少しくすぐったい。
『聞き直そうと思ったんです』
「聞こえへんように言ったし」
本当こういう時の津田さんは………と頭を抱えたくなったがそれすらも好きという思いに変換される。
あ、私からちゃんと言ったことないかも。
この津田さんの余裕が崩れた様子も見たい気持ちもある。
『津田さん、好きです』
私の言葉を聞いて津田さんは目を見開いた。肩を寄せ、優しく私の背中に手が回された。
「急はあかんよ…もー」とくぐもった不満げな声が耳のそばからする。見えないが、多分照れている。
『さっきのお返しです』
私が優位に立ったのも一瞬。
「じゃあもう1度、させて」
いつもより甘くて低く響く声が耳から入れば優位の座は津田さんに奪われる。
声に出せず、頷くだけの反応しか出来ない。
肩から頭の重みが消え、唇を塞がれた。
さっきより長いそれに、呼吸が上手く出来ずつい顔が歪む。すっと頭が離れると共に新鮮な空気を吸い込む。
「Aちゃんも十分狡いけどな」
ピンク、紫、青、幻想的な色がそう呟く津田さんの顔を照らす。
この間1人としてこのエリアに入ってこなかった。いや、見られるのも困るからむしろ良かったのかもしれない。
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reren(プロフ) - 夕さん» コメントありがとうございます。正しくその通りです。自分では気づかないこともあるので御指摘本当に感謝致します(><) お読み頂き嬉しいです!ありがとうございます。 (2月17日 1時) (レス) id: f9bc992b4f (このIDを非表示/違反報告)
夕 - こんばんは(*^^*) はじめまして。 夜分遅くにいきなりすみません。。。 物語読んでいて気が付いたのですが。。。 15話のここの部分 関節キスが……なんて言えるわけがない。 これ正しくは間接キスが......ではないんでしょうか? (2月16日 0時) (レス) @page15 id: 6d33361b7d (このIDを非表示/違反報告)
reren(プロフ) - 虚無さん» ずっと待っていただいてました??(><) 申し訳ないです。学業の方が忙しくて全く更新できてませんでした🥲 この作品もですが、新作も考えているのでこれからもお付き合いくださると嬉しいです! (5月30日 10時) (レス) id: f9bc992b4f (このIDを非表示/違反報告)
虚無 - ヤッター更新キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! (5月29日 21時) (レス) id: 4a11fac183 (このIDを非表示/違反報告)
reren(プロフ) - 蜂蜜姫さん» 楽しんでいただけてすっっごく嬉しいです!ありがとうございます!色々重なりに重なって更新できてませんでしたね…近いうちにまた更新します!これからもよろしくお願いします🙇⤵︎ (2022年12月26日 16時) (レス) id: f9bc992b4f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つた。 | 作成日時:2022年10月13日 0時