55話 ページ16
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『お母さん…話があるんだけど、いいかな』
夕食を食べ終わった頃、ほとんど放心状態だった兄が自室に篭ってから、私は母の隣に座った。
あの兄を見て、何も声をかけなかったことから考えると、母も少なからず何かを察しているみたいだ。
いつもの喧嘩と思っているかもしれないし、それでも静かに話を聞こうとしてくれる母は、本当に母らしくて本当に優しいと思う。
どの家庭でも普通のことが、私には当たり前ではないから余計に嬉しくて、悲しかった。
『お兄ちゃんのことなんだけど、…あのね』
「………うん？」
『隠さず、話してほしいの』
何を、とは言わない。
だってほら。お母さんは分かった顔をしている。
……………傷ついた顔を、している。
『…ごめんね。迷惑だよね。…でも、これ以上お兄ちゃんの傷ついた顔見たくない。何も知らないのは、怖い…！』
私が知らないお兄ちゃんの世界で何があったの？
何でお兄ちゃんは泣くの？
頼りにしていた、言わば自分の神に等しい存在が壊れてしまうのは、とてつもない恐怖だ。
すがりついてばかりの私を、どうか今だけ許して欲しい。
お母さんは依然辛そうな表情を浮かべたまま私に話してくれた。
「…そうか。そうだよね、もうそんな年頃か…早いなぁ、大きくなるのも、崩れていってしまうのも」
『…………お母さん？』
「謝るのは私の方だよ。怖い思いをさせてごめんね、分かってあげられなかった時期はごめんね。いっぱい、ごめん。Aを本当の意味で一人にしたのは、私たちかもしれないね」
お母さんは涙ぐんでいた。
必死に必死に上を向いて、涙をこぼさないように。
お母さんの言葉たちは何故か私に突き刺さる。
聞いたのは自分なのに、後戻り出来ない状況をどうしようもなく悔やんだ。
「…お母さんも知ってるよ。勝己の気持ち」
『………！』
「知っててアンタを迎え入れた。見てて痛々しかったの。あん時のアイツは。本当に…こっちの心が潰れそうなくらい」
まぁ、親バカって言われりゃそれで片付くんだけどね。
と、自傷気味に笑う母を見て私は「利用されたのか」と思ってしまう自分がどれだけ醜いか知っていた。
人間なんてこんなもの。
黙っていれば誰も心の内まで読むことはできないのだから。
何を思ったって自由なんだから。
私は、素直に「傷ついた」と認めることができなかった。
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麗葉 - お茶子ちゃん！私といいお友達になれそうだね！完結おめでとうございます！ (6月7日 23時) (
レス) @page24 id: 14fd5e9416 (このIDを非表示/違反報告)
八百(プロフ) - 終わり方が落ち着く…なごむ…ありがとう出久…とても素晴らしい作品でした。ありがとうございます！ (2019年3月23日 4時) (レス) id: db047f61b6 (このIDを非表示/違反報告)
こはる(プロフ) - もうえっと、一言で言うと神作品です(´；ω；｀)めっちゃ面白かったです！素晴らしい作品をありがとうございます！ (2017年7月9日 12時) (レス) id: c33d23c980 (このIDを非表示/違反報告)
たま(プロフ) - 語彙力なくてうまく表せないんですけど、言葉の使い方や話の構成がものすごく好みで、全部一気に読んじゃいました！新作の方のパスワード教えて下さると嬉しいです！ (2017年4月2日 23時) (レス) id: 04026620e1 (このIDを非表示/違反報告)
柊ツバキ - とっても見て笑顔が出るような最後でした！(*^^*)新作のヒロイン系ヒーローのパスワードを良かったら教えてください！m(_ _)m (2017年4月2日 20時) (レス) id: 798114a37d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りと
| 作成日時：2017年1月8日 19時
