51話 ページ12
.
「初めまして。Aの母の水谷です」
妹と瓜二つの顔は貼り付けたような笑みを浮かべ。
朝早く家を出たのは、「放課後に会えないか」という連絡を受けたからで妹は何も知らない。
放課後に予定できてしまったので朝のうちに済ませておかなければならないことがあったのだ。
特にここで書き示すようなことでもない。
ただ今は、軽々しく妹の母を名乗るこの女が気に入らず苛立っていた。
ファミレスで合流した2人は、共通する人物で繋がり、自己の主張を誰より正しいと思いここにいる。
最も、爆豪は女をエゴイストだと侮蔑するが、言わずもがなその逆も有り得る訳で。
そうでなければこの女は自ら彼を呼び出したりなどしない。
自分の夢を妨害する爆豪を良く思っての笑顔ではないことは爆豪自身も分かっている。
彼の口から出た言葉は、いつも通りの品性が疑われる暴言ばかりだった。
「うっぜぇその顔やめろや。呼んどいてわざわざ足を運んだ俺に何か言う事ねぇんかよ」
「そうね、忙しい中ごめんなさい？…で、あなたは……あの子の兄としてここに来てるの？勝己くん」
「あったりめーだろ。アンタなんかよりアイツのことは分かってるつもりだ。アイツの母親はアンタなんかじゃねぇ。だからいちいち"Aの母親"なんて強調すんな腹立つ」
「雄英に通ってるのね。Aもかしら？電話で聞いたあの子の声は相変わらず優しかった…。あなたに似なかったのね、よかったわ」
角を立てた言い草に、爆豪は紅い瞳をギラつかせた。
誰もが怯えるそれに、女は冷静に笑みを返した。
「あなたも分かっている通り、私はAと暮らしたいと思ってる。愛せなかった10年分、たくさん愛して、行きたいところも連れて行ってあげて…。そのために頑張って働いてお金も貯めた。ねぇ、雄英に通うほど頭が良いもの。分かるでしょう？」
完全に娘の気持ちなど視野に入れていない女の気持ちは一方通行で、ただの押しつけでしかないと爆豪は一蹴する。
病的な雰囲気の漂う言葉たちを黙って聞いていた。
小さなAの涙が浮かんで、いよいよテーブルに拳を振る。
すんでのところで止めて、静かに声を発した。
「…………理由はどうであれ、テメェは自分の娘を孤児院に閉じ込めたクソ野郎だ。お前の愛なんかなくても俺がいる。だからテメェはいらねぇんだよ」
それは確かな愛なのだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 601人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
麗葉 - お茶子ちゃん！私といいお友達になれそうだね！完結おめでとうございます！ (6月7日 23時) (
レス) @page24 id: 14fd5e9416 (このIDを非表示/違反報告)
八百(プロフ) - 終わり方が落ち着く…なごむ…ありがとう出久…とても素晴らしい作品でした。ありがとうございます！ (2019年3月23日 4時) (レス) id: db047f61b6 (このIDを非表示/違反報告)
こはる(プロフ) - もうえっと、一言で言うと神作品です(´；ω；｀)めっちゃ面白かったです！素晴らしい作品をありがとうございます！ (2017年7月9日 12時) (レス) id: c33d23c980 (このIDを非表示/違反報告)
たま(プロフ) - 語彙力なくてうまく表せないんですけど、言葉の使い方や話の構成がものすごく好みで、全部一気に読んじゃいました！新作の方のパスワード教えて下さると嬉しいです！ (2017年4月2日 23時) (レス) id: 04026620e1 (このIDを非表示/違反報告)
柊ツバキ - とっても見て笑顔が出るような最後でした！(*^^*)新作のヒロイン系ヒーローのパスワードを良かったら教えてください！m(_ _)m (2017年4月2日 20時) (レス) id: 798114a37d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りと
| 作成日時：2017年1月8日 19時
