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相澤先生の部屋からの帰り、寮内を見回す少女の隣で爆豪は彼女の言葉を思い出していた。
それは、名前をつけてほしいという願いだったが、自分の思うようにただ彼女を振り回してきた彼にはいささか荷が重かった。
結局朝食を抜くまでもなくなり正午をまわった食堂にはまたA組の生徒たちが集まっている。
雑然としたそこを眺め、爆豪は立ち止まる。
「あ。勝己、お昼だね!」
腹を空かしている少女が爆豪を置いて食堂に駆けていった。
それを見守るだけの彼の頭には16年の人生の中で出会ってきた覚えのあるいくつかの女性の名前が浮かび上がっていた。
ぽんぽんと軽い調子で出てきては、彼の感性によってダメ出しを食らう。
これといっていい名前がない。
いい名前、というより彼女に見合う名前を爆豪は知らないのだ。
そして自分が彼女と共存していく気で満ちていることが不思議でならなかった。
視線の先で朝のこともあってか若干怯えられている少女の横顔がやけに鮮明に見えた。
「……A」
とっさに口をついた言葉に思わず仰け反りそうになった。
「……は?A?」
自分でもなぜ唐突にその名前が出たのか分からなかった。
しかし彼女にしっくりくる名前はこれだと、急転直下に確信する。
ああ、そうだ。
彼女はAだ。
自分の体にずっと長年住み続けていたのだ。
体の一部、いわゆる臓器のようなものなのだ。
自分が発見し、自分が名付け親になる。
世界で名が残っている学者の偉人たちは、彼が知る限りでは自分の名前を取ったり思うままだった。
「A!!」
爆豪が少女を呼ぶと、声に反応した彼女が振り返る。
暫く耳を澄ませて、余韻に浸っているようだった。
それから笑顔を咲かせ、返事をした彼女は今日からA。
彼女の名前はA。
「お前はAだ」
そして正真正銘爆豪が所有する、力の源。また、パートナーである。
「ありがとう、勝己」
爆豪がそれを認めた瞬間だった。
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りと(プロフ) - KoKoRuさん» そうなんです、爆破だからもっと爆発的なイメージを持たれてしまうかな、と思って描かせていただきました。参考になったならとても嬉しいです!(´˘`*) (2018年1月22日 19時) (レス) id: 2e41884d99 (このIDを非表示/違反報告)
KoKoRu(プロフ) - なんかイメージよりフワフワした感じだけど、こっちの方が可愛いと思うので参考にさせていただきます! (2018年1月21日 22時) (レス) id: 43321ef465 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りと | 作成日時:2017年12月24日 21時