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「おはよう勝己」
ゆったりと落ち着きのある声が、ベッドで眠る爆豪勝己の鼓膜を揺らす。
太陽の光を受けた橙色の髪がサラサラと肌の上を滑り、艶やかに胸の前で垂れた。
深緑が健やかな寝顔を映して細められる。
まだ離乳もしていない赤子を見るような穏やかな表情だった。
「勝己。勝己」
「……ん」
「おはよう。ご飯食べに行こう」
朝日の眩しさに顔を顰める爆豪は寝返りを打ち、毛布に包まる。
暫く瞼を閉じていたが、先程聞こえた声が幻聴ではないことを頭が理解していくと、若干の気の重さを感じながら目を開けた。
「勝己!」
「わっ!?」
突然視界に飛び込んできた人の顔に彼は思わず素の声をあげた。
ベッドから飛び起きるまではしないが、跳ねる心臓を押さえるくらいには驚愕し、怖がった。
しかしそれは当然だ。
寮の一室一室はひとりずつで割り当てられており、お泊まり会などでも催さない限り誰かと朝を迎えることはないのだ。
更には全く知らない人となると驚かない方がおかしいと言える。
爆豪は当然のリアクションをしたまでだった。
だがそれが可笑しかったらしい少女は口元に手を当てて控えめに笑った。
あまりに突飛な出来事に流石の爆豪も声が出ない。辺りを見渡し、時計を確認し、落ち着かないまま結局彼女に視線を戻した。
「…誰だ、お前…」
入学してから今まで、彼女のような人を学校で見かけたことはなかったはずだ。
他クラスや他学年がこのA組の寮に入ってきた可能性はあるかもしれないが、そもそも寮の規定を聞いていなかった爆豪は考えもつかなかった。
寝起きの上にそんな状態では、頭が回らないのも無理はなく、にこにことしている少女に気が紛れることはなかった。
爆豪は何故か彼女の容姿が頭に引っかかった。
その配色をどこかで見た気がするからだ。
最も馴染み深い、親しみを覚える色。
「私は勝己の個性だよ。私に見合う名前をあなたにつけてほしいと思ってる」
点が線になった瞬間、爆豪は変に冷静になった。
気力を失ったというか、気が抜けたというか、とにかく無になったのは確かだった。
無邪気な笑顔を浮かべる少女にかける言葉はなかなか出てきそうにない。
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りと(プロフ) - KoKoRuさん» そうなんです、爆破だからもっと爆発的なイメージを持たれてしまうかな、と思って描かせていただきました。参考になったならとても嬉しいです!(´˘`*) (2018年1月22日 19時) (レス) id: 2e41884d99 (このIDを非表示/違反報告)
KoKoRu(プロフ) - なんかイメージよりフワフワした感じだけど、こっちの方が可愛いと思うので参考にさせていただきます! (2018年1月21日 22時) (レス) id: 43321ef465 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りと | 作成日時:2017年12月24日 21時