君と泡沫の譎詐【爆豪勝己】 (ページ2)

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母と父は2人ともリビングで死んでいた。

完全に血が抜かれた状態で机にもたれ掛かる母と、無数に刻まれた父の一部。

腕を蹴っ飛ばしてしまった時は恐怖で喉が翻った。

自分が塾へ行っている間、この家で何が起こったか検討もつかない。

もう1人、家族である妹がいないことに気づいて家中を探し回った。

警察を呼ぶより先に私は妹を心配していた。

「…あ、Aちゃん。おかえり」

やっと見つけた洗面所で、妹は何か水洗いをしているみたいだった。

電気もつけないで暗闇で作業をする妹は、元々奇抜なことをする質だったので余計に不気味に見えて、怖い気持ちを隠すために私は明かりを付けようとした。

しかし、近づいた瞬間鼻が曲がりそうな異臭が漂って口元を手で覆う。

それは明らかに妹から臭うもので、本人は依然、楽しそうだ。

非日常が惹起したこの家で唯一冷静であるのは妹だけ。

実質、私と妹しかいなかったのだが、死体の顔を思い出してまだ生きていると思い込んだ。

だから呪われると思った。

母と父だったあの塊に。

「Aちゃん。これで2人っきり」

私の妹は、殺人鬼になった。

歪んだ愛が具現化した結末だと悟った時、無邪気に揺れる自分と同じ形をした瞳が不憫に思えて、これから先のこの子の未来を想像するだけで心が痛んだ。

どんな成れの果てであろうと、私の大切な妹。

私に深く突き立てられた興味と執着を知りながら、私はその手を引くことしかできなかった。

嬉しそうな赤らんだ頬が可愛らしく思えた。

「ねぇ！Aちゃん褒めて！Aちゃんがあの2人を毎日殺したそうにしてたから、私が代わりに殺してやったの！ねぇ、私………イイコ？」

『………うん。イイコ。ありがとう…被身子』

夜の街を2人でくぐり抜けた。

被身子は夜風にはしゃいで、私は頬を覆う涙を拭いながら、朝日が昇るのを待った。

2人で生きていくには些か幼過ぎたが、これ以外きっと方法がなかったのだ。

妹は、私の代わりに殺人鬼になった。

嘘をついてつき続けて、私が殺したも同然なのだ。

ただ瞳だけは嘘をつかなかった。

それだけを一生、悔やみ続けることなる。

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