男■性■恐■怖■症【夜久衛輔】 (ページ8)

今日:17 hit、昨日:22 hit、合計:594,517 hit

07→助け？ページ8

貴「だ………や、だ……」

夜「…！」

膝枕をしていた彼女が苦しそうに唸った。

ポタ、ポタ、と静かに溢れる涙が、俺のズボンを濡らす。

夜「お、おい！大丈夫か…！？」

貴「いやｯ……やぁｯ！」

夜「おい！A！」

だんだんと声を荒げるAの肩に触れる。

夜「………」

ここで、初めて気がついた。

黒「何ちゃっかり名前呼んでんだよ」

夜「うるせぇ！」

そうだった。

この子とは今日対面したばかりだったんだ。

黒「だいたーん」

夜「～～～ｯ」

クソ。また蹴ろうにも蹴れない。

やるせない思いで頭を掻くと、膝の上に乗ったAの頭が僅かに動いた。

夜「あ…！A！大丈夫か！？」

まだボンヤリとしている彼女にお構い無しに顔を近づける。

Aの髪の毛はふんわりとシャンプーの香りがした。

貴「……ぇ…」

だんだんとAの意識が戻っていくのが分かる。

嬉しくて笑顔になったのち、

Aの目は大きく開かれ、眉は酷く下がった。

夜「……あ…」

忘れていたことが傷ついた形で戻ってくる。

俺の笑顔もすぐに消えてしまった。

貴「…ｯ触ら、ないでっ…」

また震える肩。

起き上がったAは側にあったカバンを奪い去るように手に取り、その場を離れた。

夜「まっ…待って！！」

俺の呼び掛けにビクリとする。

分かってても悲しかった。

夜「俺、お前が男が怖いこと知ってる」

貴「！！」

夜「それ知ってて近づいた…ごめん。でも！俺はそんなことしないから！俺はお前を助けたい」

キュ、とシューズの音がする。

黒尾が去った音だ。

夜「何があったとか…分かんないことだらけだけど……独りが辛いってのは分かる！だから明日もここに来いよ！」

「待ってるから」

そう言った時にはAはいなかった。

聞こえてたかな。分かってるかな。

俺の耳に、スパイクが決まった音が

濃く残った。