男■性■恐■怖■症【夜久衛輔】 (ページ13)

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キーンコーン……

１日の授業が終わり、一息つく。

疲れた…

目立たないよう、静かに教科書を片付けようとした時。

夜「Aー、部活行こうぜ」

後ろから声が聞こえた。

周りが一気に騒音に包まれる。

『え…今夜久くん、名前で呼んだ？』

『そういう仲なのか？』

『いがーい。接点無いように見えるのに』

どれもこれも喧しくて鬱陶しくて顔をしかめる。

あぁ、また。

また、余計なことをされた。

無視して席をたって、

廊下へ1歩踏み出した時に聞こえた一声。

『あんな根暗に何の用なの？夜久くんやめなよ』

あの男子、夜久という人に話しかけた声だった。

まるで味方につけ私を敵で囲もうとするその行為。

貴「…ｯ」

私は動けなかった。

『つーかいっつも下向いてキモイ』

『大人しいふりしやがって』

『友達いないんでしょ、ぼっちー？』

挙げ句の果てには使い捨てられた消しゴムを投げられる始末。

痛くなかった。痒くもなかった。

だけど心はボロボロになっていく。

貴「……ｯ…」

夜久、という人は動かない。何も言わない。

本当に、「何もしない」んだね。

それはいじめなければ、助けることもない。

言葉の裏。

怖いなぁ、人間って。

何を考えてるのか

全く分からない。

何が「一緒に帰ろう」なの

全く私の事を考えてない。

私をいじめたかった？

こうなることを分かってた？

だから呼んだ？

だから追いかけ回した？

目をつけてた？

貴「ほん…と…いいメイワク…」

『あ、何か喋った』

『聞こえないんだけど』

慣れていたはずの罵詈雑言。

辛くない。

わかってるもん。

キモイのも、弱虫なのも、無口なのも無愛想なのも全部全部。

やっぱり男なんて…

貴「信じるんじゃなかった……」

そう呟いて走ろうとする私の腕を

誰かが掴んだ。

「…待てよ」