はちみつレモン・トライアングル -Yuto.N-

Honey 11 ページ11

**









その日、授業が終わって
部活も終えて帰宅すると
家の前で偶然、詩織と出くわした。






詩織「あ、A。部活帰り？お疲れ。」


「ん、ありがと。詩織は？ピアノだった？」


詩織「そー。先週レッスン休んじゃったからその振替だったの。」


「そっか、」



楽譜が入っているであろう鞄を揺らす詩織。






その姿を見て、






…言わなきゃ。






心が決まる。









「…あのさ、詩織、」


詩織「なあに？」


「…ごめん。やっぱり昨日の話、なかったことにしてほしい。」








瞬時に訪れる、静寂。









「昨日はわかってなかったから、ちゃんと断れなかったんだけど、」






「わたしも裕翔のことが…好き、で。だから、詩織に協力できない、ごめん。」




正直に、誠実に。




だんだん尻すぼみになっていく声と反対に
詩織の表情を伺うように上げた目線。








驚いたような表情の詩織と視線が重なる。








詩織「そうだったの！？なんだー、もっと早く言ってよー。」


「ごめん、」


詩織「私たち、今日からライバルだね！」


「ライバル？」


詩織「うん。私は私なりのやり方で頑張るから。Aも自分なりに頑張って。」


「…ん、わかった。」






きっと詩織は、正々堂々と戦おうとしてくれてるんだろう。




詩織「じゃあ私、宿題まだ残ってるからもう行くね。おやすみ！」


「あ、うん。ごめんね、引き止めて。おやすみ。」







肩の荷が下りたからか、昨晩と打って変わって静かで穏やかな夜だった。

Honey 12→←Honey 10

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す