純愛じゃない【灰谷蘭】

I'm falling for you. ページ22

.


「今から家、来て。」


乱れる呼吸と心臓で頭がどうにかなってしまいそうだった私を他所に彼は私の耳元でそう囁いて手を引いた。映画なんていつの間にか終わっていて周りのカップル達が席から立ち上がる中蘭さんに腕を引かれた私は未だ顔に溜まった熱が収まらない。


「っあ、の…蘭さん…！」


彼になさられるがままの状況にそう声をかけるも無言で手を引き足を運ぶ彼に不安な気持ちが募る中、何分か歩き彼の家らしきタワーマンションに辿り着く。周りの高層ビルに劣らない程の高さを持つそのタワーマンションに思わず上を見上げる私は当たり前のようにポケットから取り出したカードで玄関を開ける彼に貧富の差を見せつけられたような気がして驚きが隠せない。


「タワマン初めて？すごいソワソワしてるけど」


「は、はい…！」


どんどんと上に上がるエレベーターに複雑な気持ちが募る中、このままの流れで男の人のご自宅にお邪魔しようとしているこの状況が非日常的すぎて正気なんて保てない。


「どーぞ」


結局最上階まで昇りつめたエレベーターから降りると目の前にある扉を彼がカードキーで開き私を中に誘導する。


「あ、あの…まだ心の準備が、」


明らかに自分の住む家とは違いすぎる内装に玄関前で躊躇うも彼は私の肩に腕を回し家の中へと押し込んでいった。「蘭さん…っ」そう言って彼の胸板を押すも力の差には勝てず、完全に家の中に押し込められた私は身を捩らせることしか出来ない。

なんとか彼の腕の中から逃げようと身体を捻らせるが彼は腰に手を回しぐっと強く引き寄せると私の身体を壁に押し付けた。いきなりの行為と背中に伝わる壁の感触に冷や汗が出る私を他所に彼は片手で私の顎を少し上げ何度目かのキスを落とす。



.

×→←×

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す