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視界の端に映るのは色とりどりの店やお家、そして綺麗な格好をした人間たち。花の匂いや嗅いだことのない匂いがして少しだけ鼻の奥がツンとなった。
そういえば、街の中を1人で歩くのは初めてだ。
2人の時は気にならなかったが、この街にはまだ俺の知らないものがたくさんあるらしい。見た事のない道具屋、武器屋、どうやって遊ぶかも分からないおもちゃ屋。なんだかよく分からないお店。こんなにこの街は賑やかだったのかと今更知った。
ふと、ひとつのお店をみつけてピタリと足を止める
ここならお金をかけることはないだろうと、俺は店の中に入った。
ズラリと並ぶ本
この街の人たちはみんなこれだけの本を読んだことがあるのだろうか？
たとえ俺が背伸びをしても、到底届かない場所にも本がある。俺が小さいのか、この店がでかいのか。
少しだけ眺めてから店を出るつもりで、適当に通路に入る。料理のレシピ、毒草図鑑に毒キノコ図鑑、医学の本や海軍の話
素通りしようとしたけれど、俺は一冊の本に引き寄せられるよう、その本を手に取った。
手に取った本の名前は
「海賊が好きなのか？」
ビクリと肩が跳ねる
突然現れた…いや、最初からそこに居たのかもしれないが。俺は壁かと思っていたものに話しかけられ上をむく。その人物と目が合った時、俺は息が詰まりそうになった。
「お前は、海賊に興味があるのか？」
慌ててその言葉に首を横に振る。別に、青年がここへ来る前に海賊になったらどうするって言っていたから情報を得るために手に取っただけだ。
「そうか」
グラララっと独特な笑い方をしたその人は一冊の本をレジへと持っていき、店を出ていった。
何が起きたのか分からなかった。ただ人に話しかけられたくらいでこんなに心臓が早くなることがあるだろうか？
数秒、その場で固まったがハッとした俺は本を本棚に戻して青年の元へと帰ることにした。
手に取っていた本の名前は、確か海賊王のことだったはずだ。
「おっ、やっと帰ってきたねぃ」
丁度荷物を片付けている青年の手を両手で強く握る。驚いたように「どうした？」と問いかけてくるが、何かを伝えたいわけじゃない。ただ、青年がここで待っていてくれた事に心底安心したのだ。
「…ほら、早く帰るよぃ」
クスクスと笑う声が聞こえた
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作者名：ミトコン | 作成日時：2022年4月22日 1時
