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次に目が覚めた時、俺の横に少年が居ることに酷く安心した。それと同時に、座りながら眠っている彼はいつ帰ってきたのだろうかと思った。
「…ぁ"」
相変わらず声は出ない。
「…A、？」
その声で起こしてしまったのか、薄らと目を開けた少年は、俺と視線が合うとそう言った。
恐らくそれが俺の名前なのだろうと理解したところで、俺は俺の名前も忘れていたのかと気付いた。
「よく眠れたかよぃ」
そう言った彼はゆるりと口の端を上げる。どれくらい寝ていたのか聞こうにも聞けないので首を縦に降っておく。
「そうかそうか、よかったよぃ」
また彼はそう言って俺の頭を撫でる。優しい手だと思うのはこれで何度目か。
「今食べれそうなものもってくるよぃ」
立ち上がった彼は再び扉の先に行く。しばらくすると1つのお椀を手に帰ってきた。
「リンゴのすったやつだよぃ」
スプーンで掬ったものを俺の口へと近付ける。俺は口を開けてそれを食べる。こういうとき、餌をもらう雛のような気分になるのは俺だけか？
とくに咳き込むことも無く、リンゴはするりと俺の体の奥へと流れていった。そのことに少年はホッとしたように笑った
何度かスプーンが器と俺を往復するのを繰り返し、もう器の中身もなくなった頃、少年はぽつりと話し出した
「…身体はじきによくなる。でも、喉は自然に回復するのは難しいだろうよぃ。」
あ、やっぱりそうなのかと思った。
コクリと最後の一口を食べた俺は少年の目を見る。悲しそうな顔をしているけれど、どうしてそんなふうに思うのか俺は分からない。
俺は目が覚めた時、ひとりぼっちじゃなかっただけで嬉しいのに。そう伝えたいけれど伝えられないのは確かに、そうだな、悲しいな。
それに、全く話せないわけではない。今は出来なくてもしばらくすれば多少マシにはなるんじゃないかと思っている
「…今度は俺が、守るよぃ」
そんなことを言う彼は覚悟を決めたような顔をしている。俺はずっと少年と呼んでいたが、もしかしたら少年というより、青年と言った方がいいのだろうか。よく見れば彼の顔には、少年のような幼さなんてなかった。
そういえば、俺たちは一体どんな関係だったのだろう。
それを知る術が今の俺にはない。でも、恐らく彼もそんなことはあまり気にしていないのだろうな
だって俺は未だに、彼の名前を知らないのだから
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作者名：ミトコン | 作成日時：2022年4月22日 1時
