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言われた通り自分で拭こうとタオルを手に取り腕を上げた時だった、身体中に激痛が走りタオルが手から滑り落ちた。
「無理するんじゃねぇよい！出来ないならそう言え！」
そう言うと彼は、俺が持っていたタオルを奪い俺の体を拭き始めた。少し恥ずかしいけど、綺麗にしてくれているのだから大人しくしておく
「あ"、がど」
あぁそうだった、声が出ないのを忘れていた。ピリピリと痛むせいで、「ありがとう」すら言えない。あとでちゃんとお礼しよう。
「…お前、それ、声、どうしたんだよい」
気付けば体を拭いていた手は背中で止まっていた。震える声でそう言った少年は俺の前に移動すると、俺の口元を見て眉間に皺を寄せた。
ただの風邪だろう？水を飲めばすぐに治るだろうことを伝えたいけど、生憎声は出ない。なんとかジェスチャーで伝えられないかと思うが腕すらまともに動かせない。
「…誰にやられた」
勘違いされている。
そう分かって眉を寄せるが、少年は俺が答えないのをみて俺の口元に手を添える。待ってくれ、勘違いしているかもしれないがこれは水を飲めば治るやつで…
「まさかだが、…お前、その時の記憶ないのかよぃ」
まぁ、確かに記憶にはない。
そう思って首を少しだけ縦に振る。
その時、とは。風邪をひいた原因ということだろうか。雨の中外にいたりでもした記憶は俺にはないからまぁ、確かに覚えていないことにはなる。
「……そうか」
少し考えていたようだが、結局彼は"その時"のことを話すつもりはないらしく、体を拭くのを再開させた。
拭いている間、お互い何も話すことはなかったが、少年はずっと何かを考えているようだった。俺は、話せるようになったらどう言えばいいかなぁと考えながら少年の事を眺めていた。
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作者名：ミトコン | 作成日時：2022年4月22日 1時
