【ONEPIECE】無口な彼の遺した言葉 (ページ12)

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結局、俺は船の上で首を横に振った。それは、この船には乗らないと意志を示したことになる。

もちろん、マルコは一緒に世界を見たいと言ってくれた。他の人たちも一緒に行こうと言ってくれた。

でも、それじゃあだめだと思ったんだ。

明日には出航するという白ひげ海賊団。だから今夜は、ずっと一緒に暮らした家で2人で同じ布団で眠った。

朝は大好きなご飯を食べて、ほんの少しの荷物を持って、マルコと船のある港へ続く森を歩く。

「…なぁ、A」

名前を呼ばれてマルコの顔を見上げる。なに？と言うこともできないのでそのまま聞く姿勢にはいる

「俺はお前が何より大事だ」

知ってるよ

俺が怪我したら手当してくれた。街のヤツらに笑われれば俺の代わりに怒ってくれた。ご飯がなければ自分の分を俺に分けてくれた。勉強を教えてくれた。

マルコの愛は、ちゃんと伝わってた。

「…必ず、迎えに来るよい」

海が見える。もうすぐ別れだ。

ポケットに入れていたメモ帳とペンを取り出して、ペンを走らせる

出来た紙をちぎってマルコに渡せば、ギュゥと抱き締めてくる。少し苦しいけど、これがきっと幸せだと言うんだろう。

「…行ってくるよぃ」

こくりと頷いて、俺は「"行ってらっしゃい"」と口を動かした

船に乗ったマルコと、その船員達は俺にまたなーマルコの弟ー！とか、たくさん叫んでいた。

小さくなっていく白い鯨の船は、きっとこの島には帰ってこないだろうとどこかで分かっていた。分かっていたけど、それでも、俺はマルコにあぁ言ったのだ。

綺麗な真っ白の紙に書かれた言葉をマルコは船の上でもう一度見た。覗き込むようにして船員達が寄ってくる

「"待ってるよ"」

その言葉が、無口な彼の遺した言葉だった。