＊* ページ29
コンコン、と扉をノックすればどうぞ〜と朗らかな返答。来訪者がまさか俺だとは思ってなかったのか、食べかけのチョコレートが手に握られたまま固まった彼女。
「失礼します。健人くん、いる？」
『…課長以上は今会議に出てます』
うん、知ってる。菊池課長もそうだし。とにんまりと笑った俺に小さくため息をついた。そうだよ、分かって来たんだからね。
健人くんの椅子を拝借して彼女の隣に座り、忘れ去られていたチョコレートを指で取り上げた。
『いいの？仕事抜け出してきて』
「課長以上居なくて仕事進まないから皆好き勝手やってるよ。こうやって仕事の合間にチョコ摘まんでる人もいるしね」
『…お腹減って、つい』
えへ、と誤魔化すように笑った後彼女は引き出しからまた同じのを取り出した。いやどれだけストックあるんだよ。
会議はついさっき始まったばかり。いつも三十分以上かかるから尋問するのにたっぷり時間はあると持っていたチョコを頬張った。
「…ん、これ美味しい」
『美味しいよねそれ！さっき取引先の手土産で貰ったんだけど、勝利くんが好きそうだなぁと思って多めに貰ってきた所なの』
ほら、と再度引き出された中にいかにも誰かに渡すように小分けにされた袋があって嬉しさとさっきまでの気持ちがぐらぐらと揺れて。
手渡されたそれをまた頬張りながら平然を装って聞いた。
「それってさっき話してた人？」
『さっき…あぁ！そうそう。あれ？見てたの？』
「聡とマリウスとたまたまね」
ふーん、と相槌を打つ彼女は俺の真意に気付いていないみたいで、寧ろ仕事モードと勘違いしてるからか貰った名刺を探し出した。
そういう事じゃないんだけど、まぁAにちょっかいかける奴の素性を知っておいて損はないか。と思ってたら彼女が呑気な声をあげた。
『あ、そういえばなかったんだった』
「無い？」
前に彼女から放たれた言葉に耳を疑った。無い？ついさっき貰った名刺が？
頷いた彼女に疑わしい目を向けていたのだろう。嘘じゃないって、と繰り返した後に話す。
『中島さんに渡したから無いの』
「…健人くんに？」
『そうそう。私、名刺貰うと中島さんに渡すことになってるの。“今後関わりがありそうなら番号登録して貰うからとりあえず俺にね”って』
すごいよね、と尊敬の意味を込めた息を吐く彼女とは対照的に驚愕の意味で息を吐く俺。
この子、思ってた以上に健人くんに大切にされてるんだけど。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 264人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
カノープス - もものすけさん» もものすけさんコメントありがとうございます！うわぁ〜そんな嬉しいことを言って頂けて感無量です…色々手探りで書いているので共感して頂けてるなら本当に良かったです！不定期ですがこれからも楽しみにして頂けると幸いです！ (2021年9月25日 8時) (
レス) @page16 id: e30a93ed77 (このIDを非表示/違反報告)
もものすけ(プロフ) - 更新してくださってありがとうございます！勝手にまろ恋と自分の中で呼ばさせて頂いていますが、本当にに入りから共感できることばかりで読んでいてによによが止まりません…。更新気まぐれだとしても本当に嬉しいです。無理なさらず、ご自愛ください。 (2021年9月20日 7時) (レス) id: 4f02f6a80b (このIDを非表示/違反報告)
カノープス - ハッピースクールさん» ハッピースクールさんありがとうございます！こちらは本当に不定期ですが楽しんで頂けたら幸いです (2021年5月30日 22時) (レス) id: e30a93ed77 (このIDを非表示/違反報告)
ハッピースクール(プロフ) - 新作楽しみにしてました！！ (2021年5月29日 2時) (レス) id: ce9527749f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：カノープス | 作成日時：2021年5月27日 21時
