私と彼の話をします ページ1
定時きっかりに終わった部内間の終礼。そこから課ごとの反省会に移るのが弊社の特徴。
「と、言っても二人しかいないからねぇ…Aさんなにかある？」
課長代理の中島健人先輩と中途採用の平社員の私、菊池Aで総務部人事課は構成されている。
特にないという意味を込めて首を振ればじゃあ終わり！と手を軽やかに叩いた。
「あ、そういえば部長がAさんと新人の子達の歓迎会を近い内にしたいって話してたんだけど、Aさんお酒とか飲める？」
『人並みには飲めますけど…外ではあまり飲まないようにしてます』
「そうなんだ、なになに？酔ったらすごいことになるとか？」
少年のように笑いながら問い掛けてくるからそんな感じですかね、と曖昧に誤魔化す。
じゃあ帰ろうか、と施錠するためのカードキーを取り出したので彼のあとに続こうと鞄を手にした時だった。
コンコン、ノックされた扉から覗かせた顔に思わず息を飲んだ。
「失礼します。Aさんいますか？」
「お、勝利じゃん。どうした？」
「ちょっと前に相談してたことの話で。今とか大丈夫ですか？」
キョロキョロ動かしていた猫目が私を捉える。その瞳と言葉の奥の感情に気付くのはきっと私、だけ。
ゆっくり頷いて中島さんに向き直った。
『すみません中島さん、私少し残ります。鍵はしっかり閉めますので』
「うん、じゃあ任せた。二人ともあまり遅くならないように〜でも残業代もちゃんとつけろよな〜」
ひらひらと手を振って閉まった扉。しんと静まり返った部屋には私と彼だけ。
『えっ、と…どこで話しますか？会議室…はもう閉まってるかな、ここでもい、』
と続けようとした言葉はするりと絡まった指のせいで止まる。恋人繋ぎになったそれをご満悦そうに見た彼はにんまりと笑う。
「A、二人きりの時はどうするんだっけ」
『………まだ会社』
「いいじゃんもう誰もいないんだし。それに俺はバレてもいいもんねー」
心底楽しそうに笑う彼は更に私との距離を詰める。
相談なんてされてない、彼の口から“相談”というワードが出てきた時は大抵「二人きりになりたい」というサインで、それは私と彼だけの合言葉。
「ふふ、A。お仕事お疲れ様。帰ろっか？」
そうなのだ、私と彼は会社の人には秘密で付き合っているのだった。
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カノープス - もものすけさん» もものすけさんコメントありがとうございます！うわぁ〜そんな嬉しいことを言って頂けて感無量です…色々手探りで書いているので共感して頂けてるなら本当に良かったです！不定期ですがこれからも楽しみにして頂けると幸いです！ (2021年9月25日 8時) (
レス) @page16 id: e30a93ed77 (このIDを非表示/違反報告)
もものすけ(プロフ) - 更新してくださってありがとうございます！勝手にまろ恋と自分の中で呼ばさせて頂いていますが、本当にに入りから共感できることばかりで読んでいてによによが止まりません…。更新気まぐれだとしても本当に嬉しいです。無理なさらず、ご自愛ください。 (2021年9月20日 7時) (レス) id: 4f02f6a80b (このIDを非表示/違反報告)
カノープス - ハッピースクールさん» ハッピースクールさんありがとうございます！こちらは本当に不定期ですが楽しんで頂けたら幸いです (2021年5月30日 22時) (レス) id: e30a93ed77 (このIDを非表示/違反報告)
ハッピースクール(プロフ) - 新作楽しみにしてました！！ (2021年5月29日 2時) (レス) id: ce9527749f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カノープス | 作成日時：2021年5月27日 21時
