episode.5 ページ5
なんだ、私は初めから
キムさんに適うところなんて
ひとつもなかったんだと思い知った。
好きな人が呼んで欲しいと言っていた
呼び方さえも、忘れるような私じゃ
そもそも勝ち目なんてなかったんだ。
でも、
「…ごめんってなによ。」
私は真っ直ぐナムを見て言った。
RM「傷つけたくなかったんだ。」
"大切な友達だから"
ほんとに、この男。
どこまでもいい男でムカつく
でも、そんなナムが好きな私も私だ。
だから、私は覚悟を決めた。
「何言ってるの?お似合いだよ2人、」
"私は応援してるからね''
そうナムに笑いかけて
自分のパソコンの画面に視線を戻した。
私はその日の帰り、美容室で髪を切った。
いつも通っている美容室、
「どうしたの?急に」なんて言われて
「ちょっと、イメチェンしようと思って(笑)」
私はまた、嘘をついた。
本当は、彼への思いにさよならしに来たくせに。
失恋して髪を切りたくなるような
乙女心が私にもあったんだと思った。
黒髪の、ストレートロングヘア
それは以前ナムが言っていた
"理想"に近づこうとして伸ばしていたもの。
RM「Aって、綺麗な髪してるな」
それはナムに褒めてもらえたから、
大切にしてきた私の宝物だった。
今の私にできる精一杯の強がりは
この宝物を手放すことくらいだった。
ヘアカットが終わって、
お店を出ると外は土砂降りの雨だった。
今の私には丁度いい、そう思った。
きっと私の代わりに空が泣いてくれてるんだ。
今日くらい、いい歳した女が
雨に濡れて帰ったっていいよね。
「ロングじゃないじゃん…」
ポツリ、
その私の声が雨と共に地面に落ちていった。
end.
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作者名:破壊コアラ | 作成日時:2021年4月10日 20時