【忍忍】 雨開の空 其の三

忍びの10-4 反応物たち ページ15

荒廃した工事現場ともなれば障害物も多いもの。ここまで狭いとなると、皆で集合しての戦闘は厳しいだろう。鉄骨を掻い潜り、隙間を縫って、数の不利を補っていく。

まあまあ頭がはちきれそうである。


「(場所が悪いだけでこんなに…！)」


思えばこれまでは、平地かつ障害物のほぼ無い場所での戦闘が主だった。対応しきれない現状に少しだけへこんだ思考が、耳慣れない銃撃音で矛先を逸らされる。

見れば、スターニンジャーが手持ちのエレキギターを構え、思い切り銃撃を放っていた。それ武器だったの！？などとツッコむ暇もなく、風に雷と、見たこともない忍術が次々に飛び出していく。

確かに、その実力は本物らしい。



「ロックンロールに決めやしょう！！」

【カゼマジック！ザ・アタック！】

「シュリケン忍法奥義！ウイニングロックスター！！！」



弦を一際強く鳴らした瞬間、彼の身体を暴風が包んだ。暴風は竜巻となり、竜巻は刃となり、足場の悪さなど意に介さず、ダイダラボッチに向かっていく。
加えてギターのネックが刀となり、無慈悲にも切り刻まれる。哀れ。

挙げ句の果てには、ちゃっかり写真を撮ったらしい。「オレシャシンキライ」がダイダラボッチの遺言になってしまった。

あまりにも毛色が違う方向性に、なれども確かに備えた実力。


「熱いな…コレ……」


天晴のいつもの台詞ですら、呆気にとられた様子だった。


〜〜


お約束の巨大妖怪もあっさり叩きのめし、帰路につける…はずだったのだが。

目の前にいるのは、ニッコニコで石膏を枠に流し入れ、早く乾け〜と言わんばかりに手で仰ぐ妖怪フリークである。妖怪を恐竜か何かとでも思っているのだろうか。


「よく分かんないけど、じいちゃんに憧れてるってことは…あいつ、もしかして良い奴なのか？」

「評価の基準それでいいの…？」

「お兄ちゃんに似てるなら、色々大変そうだけどねっ」


あの祖父を基準するのはまずいのでは、とAは苦笑いを溢した。祖父への信頼感といい、やはり似ている節がある。

と、そこに。無慈悲にも矢文が降ってきた。
キンジ渾身の足跡標本を貫いて地へ突き刺さり、結ばれた紙に祖父の顔が浮かび上がる。


「良いかスターニンジャー。お前が儂の孫達を倒すことが出来れば、弟子入りを許してやろう」





ーー突如現れた弟子希望。従兄弟達との関わりを通し、果たしてどんな化学反応を起こすのか。

今はまだ、誰も知る由のないことである。

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