【忍忍】 雨開の空 其の三

忍びの10-1 ヒーハー！金色のスターニンジャー ページ12

「…はー、疲れたぁ……」


とある休日、その夕方頃。

いかに世の中が休日と言えど、忍修行に休日は無い。朝から晩まで修行のし通しだ。本日は午前が実技、午後は少し天気が怪しくなってきた為に座学になった。
凝り固まった肩をぐっと伸ばしながら窓を見れば、障子の紙は薄暗い色を宿している。もうぞろ18時頃だろうか。


思い思いに身体を解しているそんな中。
ギイ、と音を立ててふいに隠し扉が開いた。

隙間から躍り出てトサッと程なく倒れ込んだ、その人物は。


「おじいちゃんっ！！？」

「じいさん！？」

「お祖父様！！」


いつものおでん屋の格好をした好天だった。
胸を押さえて床へとうずくまり、ただごとではない様子だ。

あの無敵たる祖父が倒れている。その現実を正しく認識してしまい、それだけでサァッと血の気が引く。


何でもない修行の一日の終わりに、とんでもない大事件が舞い込んでしまったのだった。



〜〜



『奴が、日本まで追ってきよった……！』


そんな意味深な言葉を残し、眠るように気を失った祖父。あのラストニンジャが遅れを取るとはとても考えにくいが、言葉から考えるに誰かに襲われた可能性が高いだろう。

"最後の忍者"と呼ばれ、一人で闘ってきたであろう彼。どこかで恨みを買ってしまったということもあり得る。


「…お祖父様は、お休みになりました」


祖父を部屋まで送り届けてきた霞がそう皆に告げた次の瞬間。ダン、と机を強く打つ破裂音、次いで、聞いたことのない程に厳しい、天晴！！と名を呼ぶ伯父の声。

正座のまま俯いていたAが弾かれたように顔を上げると、背中だけで分かる程に殺気を漲らせた天晴が、今にも飛び出す所だった。


「やめなさい！復讐の為なんかに、忍者の力を使うのは良くない！」

「それに、犯人だって分からないでしょう！？」

「そ、そうだよ、流石に一人は危険、」

「ッ、またどうせあの狐野郎に決まってる！！」


控えめに嗜めたつもりのAの声は、苛立った天晴のそれに掻き消された。
殺気に満ちた空気が揺れる。

が、今回に限っては十六夜九衛門の可能性は低いかもしれない。何せ祖父の言葉は"日本まで追ってきた"、なのだから。

既に何度も遭遇している相手に対する表現ではない。


「…その刺客を今一度呼び寄せて、犯人を割り出す」


推理していても埒が開かないと、八雲が作戦を勘案する。霞も同調してしまい、結局伯父の嗜めは押しきられてしまったのだった。

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