【文スト】月が綺麗ですね。

第肆話「殺される」 ページ4

「海が綺麗ですね」


目覚めて早々芥川さんにそう告げる。

さすがに疑問がられたけれど、特に意味については詮索しないらしい。


回し言葉は結構好きだ。

賢い人以外には伝わらずに済むから。


太宰さんは、分かる人だった。


でも彼ならきっと死ぬまで気付くことはない。

それは、もしかしたら悲しい事かもしれない。


それでも私は伝えます。

貴方への思いを。


「暖かいですね」

「地下内は寒いと聞かされたが…」


ほら、貴方は言葉をそのまま受け取る。

だから安心して使う事が出来るんです。


「芥川さんは夏目漱石をご存知ですか？彼の小説は素晴らしいですよ。一度手に取っては如何ですか？」

「そんな暇は僕にはない」


まぁ…そうだね。

貴方と私じゃあ、立場が全く違うもの。


貴方が勝ち組なら、私は負け組だ。


もし貴方までもが負け組と言うなら、私は舞台にさえ立てないモブ。


そう、殺されて終わるそんな人生。


きっと私は数日経てば死ぬのは確定。

殺されるんだ。


ポートマフィアの狗に呆気なく、あの人が云っていたように。


死ぬのなら、せめて芥川さんに殺して貰らいたい。

その異能力で……。


なんて、少し贅沢かな。

でも、それくらいでしか幸せを見いだせないの。

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