第五十五話 追憶 ページ10
「きゃあぁぁっ！！」「うわあああっ！！！」
『……！！』
「な、んや…？！」
沈黙が流れている中、外から劈く悲鳴が聞こえる。窓を開けると、道の真ん中に野次馬が出来ていた。まさかと思い、すぐに部屋を出た。ゾムも後ろについてきている。
『すいません、すいません、道を開けてくれますか。』
なんだなんだと野次馬は退く気配がない。人と人の隙間をすり抜け、やっと見たその景色。
地獄のようだった。
血に伏せた男女の腹からは出血し、綺麗な白の石畳に鮮血が広がっていく。隣に立ったゾムも、絶句していた。
助けを、呼ばないと。
『…、い、
医者を、早く！誰か医者を呼んできてください！』
誰もが、助からないと諦めの色を持っていた。どうして。
誰かの死が目の前にあるのに、救われるかもしれない命が、そこにあるのに。
『しっかりして…！目を閉じないで！』
ああ、見覚えがある。
嫌な光景。地獄のような、あの日。
段々と、女性の手が冷たくなっていく。ぱちんぱちんと彼女の頬を叩くも、目はゆっくりと閉じられ、そのまま。
『………、…。』
どうして。
「…手、真っ赤だよ。」
ゾムが、私の手を握った。
悔しくて、たまらなかった。
「通報があったのはこちらですね？」
誰かが、そう声を上げた。人々が道を開ける。その先には、紺色のスーツを着た、身嗜みがきちんとされた男性が立っていた。ゾムほどではないが髪は長めで、その喋る口からはギザギザとした歯が見えた。
「……、ご婦人、手が汚れております。どうぞ、案内するので着いてきて頂けませんか。そちらの旦那さんも一緒に。」
丁寧な喋りだ。
人馴れしたその口調と、人々の対応で何となく国の関係者だと、そう分かった。
彼の後ろについていた兵士が、死体に黒い布を被せていく。歩き出したそのスーツの男性にゾムが着いていくので、私もそれの後を追う。
…まだ、息が荒い。過去と重ねるのはあまり良くはないと分かってはいるが、どうしても思い出してしまう。
その度に、苦いものが胸の奥に広がる。
「…大丈夫？落ち着いたかな、」
ゾムは私の顔色を見て、背中をとんと押す。ええ、平気よ。心配ありがとうと返すと、お上手ですねえとスーツの男性がからからとおかしそうに笑った。
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五角形レンガ - すっげぇ、、、いや、感動でしかないです、凄すぎませんか！？ (8月12日 10時) (
レス) @page29 id: 142fcb5a32 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑 - 神作品、、、ッッッッ (2022年12月19日 12時) (レス) @page29 id: 9753754a57 (このIDを非表示/違反報告)
はしばみの揚げ物(プロフ) - 鴉さん» お！！そうですそうです！！！！いやあ知ってる人いた………！！！！！ (2022年10月19日 18時) (レス) @page14 id: f8654c08a0 (このIDを非表示/違反報告)
鴉 - 作者様！！！！59話の夢主さんが言っている小説ってメディウムですよね！！！！ (2022年10月19日 18時) (レス) @page14 id: cdf302c4aa (このIDを非表示/違反報告)
GuriGura(プロフ) - う‘‘ぁ‘‘ッ、、、、、、、、、さ‘‘い‘‘こ‘‘う‘‘ッ‘‘、、、、、、、、、 (2022年9月25日 8時) (レス) @page29 id: b9eb3e9d2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はしばみ | 作成日時：2022年9月8日 23時
