第三十二話 私的制裁 ページ34
(you side)
すたっと下ろしてもらい、あたりの草むらをのぞき込む。
それと同時に、げえっと嘔吐した。
最悪、本当に。
「Aっ、平気なんか…?」
『…もう大丈夫よ。E国の幹部は今どこに?』
「東西にある森で戦っとるっつってたわ…。
…まさかお前、行こうとしてるんとちゃうやろな?」
ゾムが心配の表情をこちらへ向ける。今までに無い、焦りの顔。
『当たり前でしょ。私はやられて大人しくしてられるようないい子じゃないから。』
「だ、だ、駄目や!そんな怪我して、フラフラなんに…!絶対あかん!」
『それは私が決めることよ。
絶対に生きて帰るわ。』
ぐっと、口を固く閉じるゾム。袖で目元を拭い、分かったと返事をした。
『銃、借りていくわ。生きなさい、ゾム。』
「…死んだりしたら、許さへんからな」
『死なないわよ。』
だっと駆けていく。
ゾム、私だってね、怒らない人じゃないの。自分自身を傷つけられて、笑って済ませるような女じゃない。
_"ゾ、ゾム、私は平気だから…!Aさんにも、きっと訳があったんだよ…。"
舌打ちをする。
『トントン!』
「Aっ…?!ぐ、あっ」
彼も随分とボロボロで。体力的にも限界なのだろう、あの大剣を弾き返され、尻もちを着いた。
見覚えのある男が、トントンに剣を振り下ろす。
男の手元を狙い、発砲した。ぶすっという弾ける音ともに、男の手から血が吹きでる。
それと同時に、トントンが男の足元を崩す。
「ひっ、や、やめろ…!」
『…随分と弱腰ね。昨晩までの威勢はどうしたのかしら。』
あの、W国の腕章を破いた男。
自分から宣戦布告したようなものなのに、随分と腰抜けだな。
「っルーカス様!!」
若い新兵だろうか、たっと駆けてきて庇うように私達の前へと立ちはだかった。
『…ああ。あなただったのね、私を檻から出したのは。』
「っ、」
『残念ね、か弱い草食動物は大きく成長して肉食となった。子猫だって、時に残酷な爪を持っている。
どきなさい。あなたまで殺すわよ。』
「…っじ、自分を殺す代わりに、この人は殺さないでください。
報いは全部俺が受けます、だから」
発砲音と共に、男がばたりと横へと倒れた。眉間からは血を流し、目は見開いている。
『あなたとそいつの罪は関係ない。私の私的制裁よ。
そいつは私を攫い、地獄を味わわせた。あなたは私を檻から出した。
あとは自分で勝手にやって。トントンならその人を殺すぐらいわけないでしょ。』
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はしばみの揚げ物(プロフ) - 霜華さん» (レスつけてなかったです…!!!)はしばみよりすごい作品を理解してるかたですね…!??!?更新ゆったりまったりですが頑張ります!!! (2022年8月17日 20時) (レス) id: f8654c08a0 (このIDを非表示/違反報告)
霜華(プロフ) - 常に冷静沈着で俯瞰し、諦観している感じの子が大好きマンだから読んでて楽しいです…!あとメンバーの性格(?)が色濃く表れていて好きです!更新頑張ってください!! (2022年8月17日 19時) (レス) id: fd554933f3 (このIDを非表示/違反報告)
はしばみの揚げ物(プロフ) - ロックマさん» わあ!!ありがとうございます…っ!!!頑張ります!!!! (2022年8月16日 15時) (レス) id: f8654c08a0 (このIDを非表示/違反報告)
ロックマ - むちゃくちゃ好きですこの作品!!!!! これからも頑張ってください (2022年8月16日 12時) (レス) @page19 id: 7ddd684455 (このIDを非表示/違反報告)
はしばみの揚げ物(プロフ) - イナリさん» こういう系のお話を書きたかったので…!!ノリと衝動で書いたので、足らない部分があるかもと思っていましたが、そう言ってもらえて嬉しいです!!(更新頻度はバラバラです生きてる時もあれば泥みたいになってる時もあります…笑)ちまちまと更新頑張っていきます!! (2022年8月15日 20時) (レス) @page16 id: f8654c08a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はしばみ | 作成日時:2022年8月13日 18時