第二十五話 信じて ページ27
『はあ…E国の調査に向かえと。』
ああ、と重苦しい雰囲気が漂う食堂に、彼の声が響く。聞こえるのは、彼の声と、食器の音だけ。
まるで他は鳴らしてはならないというように、トントンとオスマンは当たりを睥睨するように見ていた。
「一応ゾムも付けておく。パーティーの日の3日後、旅行している人間を装って、E国内部の情報を手に入れてくれ。」
『私はそれでいいけれど、もっと他に優先できることはあるはずでしょう?
E国のセキュリティは越えられなかったの?私よりもっと優秀な、暗躍に特化した人間はいないの?
人を動かすより先に手を動かしなさいよ。』
「ああ、勿論したで。セキュリティも固いし、どっかの誰かさん達が首切ったせいで中々そういうやつも見つからへん。なあ?シャオロン、コネシマ。」
「アッ、ハイ、そうッスね…!!」
「その節はホンマ…堪忍…。」
トントンの目の下の隈前より酷くなってるな。青とか紫とかより、黒って感じ。メイクでもしてるのかってぐらいなんだけど。
『…別に異議は無いわ。話はそれだけ?』
「ああ、もうええぞ。」
そう言い終わった途端、もっきゅもっきゅとケーキを頬張る彼。トントンに怒鳴られるも、気にしていないようだ。
『ロボロ。』
「ん゙っ?!?な、なんや?」
食べていたものを喉に詰めかけたのか、どんどんと胸元を叩き、ごくんと飲み込む。振り返った顔は、なんとも言えず。
手に握ったカメラの残骸を彼に渡すと、えっと驚いた声を上げる。
『いつから仕掛けてたか知らないけど、何?みていれば、私は何もしないと思ったの?』
「そ、れは…。」
『監視下に置いておけば、無駄なこともされないって、いつかあの子を虐めた証拠が出てくるって、そう思った?』
「違う…!」
『…違う?じゃあなんで仕掛けたの?口先だけならなんとだって言えるわ。
そうやって違うだの心配だの言うくせに、本当は疑っていた。…ああ、いや、あの子を信じていたかっただけかしら?』
がたん、と椅子を鳴らして立ち上がり、彼は私の胸ぐらを掴んでいた。
「っ、うる、さいねん…!」
「俺がどれだけ…!」と、涙ぐんだ声でそう言った彼。はあ、と嘆息する。
いい加減な優しさを振るうだけ振るって、挙句彼は見返りを要求する。それがどれだけ傷に塩を塗る行為でも、関係は無さそうだ。
ああ、本当に……
875人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はしばみの揚げ物(プロフ) - 霜華さん» (レスつけてなかったです…!!!)はしばみよりすごい作品を理解してるかたですね…!??!?更新ゆったりまったりですが頑張ります!!! (2022年8月17日 20時) (レス) id: f8654c08a0 (このIDを非表示/違反報告)
霜華(プロフ) - 常に冷静沈着で俯瞰し、諦観している感じの子が大好きマンだから読んでて楽しいです…!あとメンバーの性格(?)が色濃く表れていて好きです!更新頑張ってください!! (2022年8月17日 19時) (レス) id: fd554933f3 (このIDを非表示/違反報告)
はしばみの揚げ物(プロフ) - ロックマさん» わあ!!ありがとうございます…っ!!!頑張ります!!!! (2022年8月16日 15時) (レス) id: f8654c08a0 (このIDを非表示/違反報告)
ロックマ - むちゃくちゃ好きですこの作品!!!!! これからも頑張ってください (2022年8月16日 12時) (レス) @page19 id: 7ddd684455 (このIDを非表示/違反報告)
はしばみの揚げ物(プロフ) - イナリさん» こういう系のお話を書きたかったので…!!ノリと衝動で書いたので、足らない部分があるかもと思っていましたが、そう言ってもらえて嬉しいです!!(更新頻度はバラバラです生きてる時もあれば泥みたいになってる時もあります…笑)ちまちまと更新頑張っていきます!! (2022年8月15日 20時) (レス) @page16 id: f8654c08a0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:はしばみ | 作成日時:2022年8月13日 18時