第三十七話 目覚め ページ39
暖かい匂いに、ふと目を覚ました。
草木が、空から光を受けて輝いている。美しい朝だった。
そういえば、雨が降っていたのが晴れたのかしら。
空には虹がかかっている。
『………。』
声を出そうとすると、からっと渇いており、痛い。
_檻から出る時の演技がまずかったかしらと、喉を押え苦笑した。
私の腕には点滴がうってある。スタンドを持ち、靴を履いて医務室を出た。からからと空虚な音が廊下に響く。
今は朝か。何時かは見てなかったが、兵士が見当たらないのは朝食だからだろうか。
カツカツと、靴の音が鳴る。
食堂の扉をゆっくりと開くと、幹部達は一斉にこちらを向いた。
しんぺい神が持っていたおぼんが、床へと落とされる。皆、目を見開いている。
あー、喉痛い。
スタンドを持ちからからと歩く。食堂のいい匂いは、私の食欲を誘って。
鳴く腹を手で押さえると、誰かが「A様にお食事を用意しろ!」と声を上げる。
「…おはよう、A。」
泣きそうな笑顔で、しんぺい神はそう言った。
『ぉ、はよ』
「喉、痛いんでしょ?無理しないでいいからね。
A、1週間も寝てたの。生きてるけど死んでるみたいで、正直助けられるか怖かった。」
抱き寄せられる体。ぽんぽんと頭を撫でる頭は優しくて。
「…よかった、ほんま。」
『わたしは、しなないわよ』
「うん、うんうん、せやね。」
今にも泣きそうな声で言うもんだから、彼の背中を撫でる。
嗚咽をあげた彼。
『だいじょ、ぶよ、わたしは、ここにいるから』
「うん、」
『どこの、うまのほねともわからない、やつらになんか、ころされない』
「うん…」
『だから、へいきよ』
抱き寄せる拘束は、なお強くなり。唸ると、ごめんと彼は腕を放した。
「…今日は、目一杯食べてな!」
『ええ』
彼の席の近くに座ると、隣にエーミールが座ってきた。
ごくりと水を飲むと、彼の方から話しかけて来た。
「…ご無事で、本当に良かった。」
『……ええ、そうね。』
「……、ゾムさんから、聞いていました。
無理に爆発を引き起こしていたと。」
彼が何を言おうかは、私も分かっているつもりだった。
『どっちみち、そうするしかなかったでしょう。』
開かれた小鍋のお粥を咀嚼する。なにも、味はしなかった。
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はしばみの揚げ物(プロフ) - 霜華さん» (レスつけてなかったです…!!!)はしばみよりすごい作品を理解してるかたですね…!??!?更新ゆったりまったりですが頑張ります!!! (2022年8月17日 20時) (レス) id: f8654c08a0 (このIDを非表示/違反報告)
霜華(プロフ) - 常に冷静沈着で俯瞰し、諦観している感じの子が大好きマンだから読んでて楽しいです…!あとメンバーの性格(?)が色濃く表れていて好きです!更新頑張ってください!! (2022年8月17日 19時) (レス) id: fd554933f3 (このIDを非表示/違反報告)
はしばみの揚げ物(プロフ) - ロックマさん» わあ!!ありがとうございます…っ!!!頑張ります!!!! (2022年8月16日 15時) (レス) id: f8654c08a0 (このIDを非表示/違反報告)
ロックマ - むちゃくちゃ好きですこの作品!!!!! これからも頑張ってください (2022年8月16日 12時) (レス) @page19 id: 7ddd684455 (このIDを非表示/違反報告)
はしばみの揚げ物(プロフ) - イナリさん» こういう系のお話を書きたかったので…!!ノリと衝動で書いたので、足らない部分があるかもと思っていましたが、そう言ってもらえて嬉しいです!!(更新頻度はバラバラです生きてる時もあれば泥みたいになってる時もあります…笑)ちまちまと更新頑張っていきます!! (2022年8月15日 20時) (レス) @page16 id: f8654c08a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はしばみ | 作成日時:2022年8月13日 18時