二日目、記憶。 ページ10
幾分かは似合ってるじゃないかと言うと、グルッぺンはAを軽く睨んだ。
選ばれた服はスッキリしたものではあるものの、貴族が着るようなヒラヒラとしたもので。こういう袖が開いたものはあまり好ましくはないとグルッぺンは愚痴を漏らした。
「明後日までだろう。軍に戻ったら捨てるなりすればいい。」
「それは…できないと、お前も分かっているだろう。」
「さあ。」
Aが道中で買ったパンを投げ渡すと、どうもと返ってくる。
もっきゅもっきゅとグルッぺンは咀嚼しながら、ふと素朴な疑問をAへと投げかけた。
「お前は、1人でここに住んでいるのか。」
Aがぽかんとした顔をするものの、すぐに元に戻る。
「まぁな。でも自分の金で買い取った訳では無いから、不法占拠にはなるが。」
「…捕まりはしないのか？」
「まさか。ここの部屋と、風呂場と食堂以外は人気がないだろう？よっぽどな奴らは中にすら入ってこない。外周をぐるっと回る肝試し程度で飽きて帰るさ。」
そうか、と返事した後、止まった手をまた進めるグルッぺン。あと半分程度になった時、パンを見つめた。
Aの方へ向き、いるか？とグルッぺンは首を傾げる。
その光景に、Aは少し背筋を凍らせた。
「……、…、誰がお前の口をつけたものを食べるかよ。」
「…そうか？何も、食っていないようだから。」
「私は腹は空いていない。」
ああ。クソ。
奥歯を噛み締めた。
「…お前は、家族はいないのか？」
「……、ああ、居ないね。母親はもう…21年も前になるか。父親はいつ死んだのかは知らんが、どうでもいい。」
そういうお前だって居ないだろうとAが言うと、俺はいるぞと意地を張るようにグルッぺンはそう言った。
「皆が…仲間が、家族だ。」
「…そうか、羨ましいこったね。」
頬杖をつきながら、グルッぺンの方を見る。頬にパンくずがついてるとAが笑うと、「む…」と、グルッぺンはおかしな返事をした。
仲間、家族、か。
全部。全部、奪われた。何もかもを。
ああ、いいな。
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かきくけの(プロフ) - すごい、作品ですね…(小並感)久しぶりに神作品に会えました！ (2022年10月15日 7時) (
レス) @page24 id: e7af349437 (このIDを非表示/違反報告)
名無しのサメ(プロフ) - 神様ですか？神様ですね。こんな、素晴らしい作品を作っていただき、ありがとうございます！ (2022年10月6日 8時) (レス) @page24 id: fed687ffc2 (このIDを非表示/違反報告)
月の光 - おっと神のような作品を見つけた。オークションものは結構あるけどネタ物が多いからこんな感じのすごくうれしいし好みです！！応援しています！ (2022年10月1日 22時) (レス) @page5 id: f3c01cad39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はしばみ | 作成日時：2022年10月1日 16時
