山本くんと片思い ページ40
side you
不毛な恋なんてやめた方がいい。
私のこの恋心は絶対に報われない。
だって、私の想い人はもう愛する人に出会って幸せそうだから。
悔しい？
憎い？
そんな気持ちすらない。
だって、想い人の愛する人は私も大好きだ。
どうすることも出来ないこの恋心に、
本日の5回目のため息。
｢柚、ため息つきすぎ。｣
｢よしくん、うるさい。｣
隣の席で仕事をする友達兼仕事仲間のよしくんこと、山本祥彰。
友達の紹介で出会い、QuizKnockに誘ってくれた張本人だ。
｢…さっさと玉砕したら？｣
分かってる…
この気持ちは早く諦めなきゃいけないことを。
分かってる…誰も幸せにならないことを。
｢いつまで、河村さんに恋してるのさ。｣
｢…うるさい。｣
私は呆れる彼を横目に、仕事に集中した。
｢お昼できたので、時間あるかたからどうぞー。｣
Aさんの明るい声がする。
｢Aさん！今日のお昼はなんですか？｣
私はAさんも大好きだ。
声がすればぴょこぴょことヒヨコのように彼女に寄っていく。
｢柚ちゃん、今日は餃子とわかめスープだよ！ニンニク入ってないから、お仕事にも外出にも、
支障はございません！
気になる時はりんごジュースあるから飲んでね。｣
｢わーい、楽しみです！｣
｢ふふ、いっぱい食べてね。｣
区切りのいいところまで仕事を終わらせ、
ルンルンでキッチンに行くと先客がいた。
｢あ、河村さん。お疲れ様です。｣
｢ん？柚さん、お疲れ様。ご飯食べに来た？今、新しいの焼いてるから少し待ってて。｣
｢河村さんが焼いてるんですか？｣
｢Aさんのお留守番。
面倒見といてって押し付けられた。｣
ホットプレートを見つめる河村さん。
その横顔に私の鼓動は早くなる。
私は河村さんの隣に立ち、
餃子が焼けるのを2人で眺めている。
するとキッチンにAさんが、戻ってきた。
私は何となく、河村さんから1歩離れた。
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作者名：檸檬 | 作成日時：2022年4月2日 11時
