恋心の行くところ 〈�掘� ページ17
あの後、笑顔を保てなくなった渉が部室で柄にもなく大泣きして、それを複雑な表情の京介が慰めた。そして、それからまた１週間が経った。
「おはよう、渉、京介」
「おはよう、お前ら」
「ああ、おはよう、海に、空先輩」
「…おはよう、海」
「「「……」」」
気まずい雰囲気が流れる。
説明するまでも無く、一番最後の台詞が渉だ。この１週間、渉は空を完璧に無視していた。
おそらく、何を話せばいいのか分からないのだろう。
だが、そんな中。
「…渉、どうして俺と話してくれない？」
勇者がいた。紛れもなくそれは空だ。
「俺が何かしたなら謝るし、話せないのはなんか色んな意味で困る。だから、教えてくれないか」
渉は一瞬目を見開いて、それから誰にもわからないような小さな溜息をついた。
それから、自嘲気味に微かな笑いを零す。
「…ほんっと、空さんは良い『先輩』ですよねえ……
…じゃあ、殴らせてください。――言葉で」
「え、ちょっ」
困惑する空の肩をぐいと掴み、空の顔が渉の顔の真横に来るまで下げる。
そしてその体勢のまま、空の耳に何か囁いた。
空の目玉が零れんばかりに見開かれる。目は紅くなっていないので、言霊は使っていないのだろう。
「そういうことです。返事はわかりきってるし未練を引きずるつもりも無いんで、何も言わなくて良いです」
言い終わると空の肩を突き放して、そのまま渉は自分の教室へと歩き出す。
京介達３人は、しばらくその場で呆然とすることしかできなかった。
――――
「そういう、ことだったんだ……ごめんね、氷山に、潮原さん」
廊下の死角、京介達に気付かれない場所で、オレンジに近い茶髪の低いツインテールが揺れた。
千秋である。
偶々偶然居合わせただけなのだが、なんとも出ていきづらい雰囲気になってしまった。
まあ、それもこれも、自分が悪いのか。
何故あんな言い方をしたのか。簡単だ。空に、自分に執着してほしくなかったのだ。冷酷な人間だと思われても構わない。というか、むしろその方が都合が良い。
…まあ単純に、自分に他に好きな者がいるという理由もあるのだが。
「まだ、こっちの人達を巻き込む訳にはいかないからね」
自分の鞄の中から、微かな音と振動がする。
端末を取り出し電源を点けると、そこにはすっかり見慣れてしまった名前。
自嘲気味な苦笑いを零してから、千秋は液晶画面の応答ボタンを押した。
「はい、もしもし。…ああ、――さんでしたか…」
作者よりささやかなお詫びとお知らせ ※できれば読んでください→←恋心の行くところ 〈�供�
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Lemon | 作成日時：2015年10月18日 21時
