職業：女優１０

いちばん ページ47

意識を取り戻して１ヶ月以上が過ぎた。
面会出来るようになってからは、毎日いろんな人がお見舞いに来てくれる。
が、それでもやっぱり退屈な時間は多い。


まだ安静にしていないといけないし、他の患者さんに迷惑がかかるから自由に病院内を動き回ることも出来ない。
外出許可なんてまだまだ先の話。
テレビもゲームも漫画も小説も飽きた。



「暇だ……」



誰か来ないかなぁ。
この際みーちゃんでもいいよ。
今なら嫌味の一つも笑って聞いてあげるよ。


そんなことを考えながらぼーっとしていると、コンコンとドアをノックする音がした。
はーいと返事をすると、スッとドアが開いて亮ちゃんが顔を出す。



「A」


「亮ちゃん、今日も来たの？」


「来ちゃダメなの？」



お土産と言って持ってきたプリンを冷蔵庫に仕舞って、亮ちゃんはベッド脇の椅子に腰かける。
それと同時にするりと私の手を取って指を絡めた。



「そうじゃないけど。忙しいんじゃないの？」


「俺が会いたいからいいの」



あの日以来、ほぼ毎日のようにここへやって来る亮ちゃん。
少しでも顔が見たいと、昨日なんか移動の合間に顔を出した。
たった１０分だけの為に。


吉沢さん、こんな行動力ある人でしたっけ？



「亮ちゃんってこんなにベッタリだった？」


「Aだからに決まってるじゃん」



確かに元々私達はスキンシップが多かったけど、付き合ってからそれは目に見えて増えた。
亮ちゃん曰く、何年も片思いして我慢してきた反動だそうです。
自分で言うのもなんだけど、亮ちゃん私のこと好き過ぎでしょ。



昨日は１０分だけだったけど、今日はこの後予定はないらしい。
丁度退屈してたと言うと



「今日は面会時間ギリギリまでいるよ」



と笑ってくれた。

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