職業：女優１０

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「……俺、気付かなくて……嫌われたとばかり思って……」


『あいつバカだからなぁ。そういうの下手くそなんだよ』



電話口でもわかる、水田さんの苦笑する声。



何も知らなかった。
何で嫌われたんだろうって、そんなことばっかり考えてて。



気付きもしなかった。
Aがあのとき、どんな気持ちでああ言ったのか。



考えもしなかった。
あのとき、一番辛かったのは間違いなくAだったはず。



なのに、何で俺はAの側にいなかった？



『俺が言うことじゃないかもしれないけど……あんまり自分を責めないでね』



水田さんの静かな声が、そう呟いた。



「……え？」


『Aが自分で決めてやったことだから。吉沢君は何も悪くないからね』


「……でも……」


『それにアイツ、吉沢君に酷い事言ったんだろ？ 嫌になるだろ、普通』


「そんなこと……」



そんなことあるはずない。


嫌になんてなるはずない。


なれるはずがないんだ。



『……吉沢君が無事なら嫌われてもいいって、本人も言ってたから』



最後に見た、Aの泣きそうな表情がふと頭を過る。
そんなことを思いながら、俺にあんなこと言ったの？
あの時、やっぱりAは泣いていたの？


Aへの謝罪の気持ちと自分への後悔が、俺の心を侵食していく。



Aに会いたい。



会って謝りたい。



守れなくてごめんって



嫌いになんてなれないよって



そう言いたいけど



『面会できるようになったら、連絡するよ』


「……あの、俺は……」


『無理に会いに来てくれとは言わない。……吉沢君に任せるよ』



宥めるようにそう言って切れた電話。



本当は今すぐにでも会いに行きたい。


でも俺は、会いに行っていいんだろうか。
俺がAを守るって何度も何度も約束したのに。


現実はどうだ。
結局俺は何も知らないまま、ただAに守られてただけじゃないか。



Aはずっと辛かったのに



苦しかったのに



それなのに俺は、嫌われたって、自分のことばっかり考えて。
目の前の現実から逃げてばかりで。



そんな俺が、どの面下げて会いに行ける？



後日、面会出来るようになったと水田さんから連絡が来たけど。
臆病な俺はAに会いに行けなかった。

事件の概要→←守れなかった約束

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