職業：女優１０

救世主 ページ14

スタジオの廊下を歩いていると、すれ違いざまに声をかけられました。



「AAちゃんですよね？」



背が高めの、見た目ちょっとチャラい感じの男の人。



「はい」


「俺ファンなんです！ 握手してもらえません？」


「ありがとうございます」



笑ってお礼を言いながら手を差し出すと、ぎゅっと握られる。
んー、ちょっと力強くないかい？
しかもその手を離してくれないまま、なぜかペラペラと喋り始めた目の前の男の人。


あのー、私楽屋戻りたいんですけど。
そんな私の都合なんかお構いなしに喋り続ける。


訂正。
この人、見た目だけじゃなくて中身もチャラい。



「俺イケメンモデルって言われてるんだよねー」


「そうなんですか」



この人モデルさんなのか。
何に出てるのかしらね。
雑誌でもテレビでも見たことないけど。



「Aちゃんもイケメンだと思う？」


「そうですねー」



いや、悪いけど全然イケメンだと思わない。
あなたよりイケメンなんて周りに腐るほどいるから！
私の交友関係舐めんな！
とは口が裂けても言いません。


ニコニコ笑ってるけど、内心はさっさとどっか行ってくれないかなぁと思ってます。
さり気なくそんな空気も出してるんですけどね、気付かないのかな？



「やっぱりAちゃんくらい綺麗な子の隣はイケメンじゃないといけないと思うんだよ」


「そんなこともないと思いますけどねー」


「あれ、イケメンに興味ない？」


「そうですねー」



適当に返事をしているのにも気付かない自称イケメンモデル。
いい加減にしてくれないかな。
本気でイライラしてきたんだけど。



「すみません、私そろそろ時間が……」


「そうなの？ なら連絡先教えて。今度飯行こうよ」


「携帯今持ってないんで」


「じゃあ一緒に楽屋行くよ」



来るなよ！
遠回しに断ってんの気付けよ！
そんな私の心の声は届くはずもなく、私の腕を引いて歩き出す自称イケメンモデル。
これはさすがにやり過ぎ、と腕を振り払おうとすると



「A？」



と名前を呼ばれた。

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