職業：女優４

お渡し会 ページ3

写真集の発売が決まってから、私の空き時間はサインを書くことに費やされた。
書いても書いても新しい写真集が並べられて、全く終わる気がしない。
腱鞘炎になりそう。
でもせっかくみんな予約してくれたんだから、という気持ちをモチベーションにして頑張って書き続けた。
なんとかサインを書き終える頃には、お渡し会の詳細も決まって。
本当は地方にもいっぱい行きたかったんだけど、スケジュールの兼ね合いで結局東京と大阪のみ。


地方の人達ごめんね、とか
みんな来てくれるかな、とか
いろいろ考えていたら、予定人数を大幅に超える申し込みがあって、急遽人数を増やすことになったらしい。
ありがたい話だ。


そしてあっという間にお渡し会当日。


衝立で仕切られたスペースで待っていると、スタッフさんに１人ずつ誘導されてやってくるファンの人達。
写真集を渡して、握手して、少しだけ話をして。
思ったより女性の方も多くて、小さいお子さんからご年配の方まで来てくれて嬉しくなる。



「Aちゃんかわいい！！」


「ありがとう！」



「うわ、生A……」


「うん、生Aだよ(笑)」



「大好きです！ ずっと応援してます！！」


「ありがとう、嬉しい！」



こういうのはいい。



「好きって言ってください！」


「大好きだよ」



「銀魂の華蘭で何か言って下さい！」


「急に？(笑) えっと、じゃあ……帰り道は気を付けなさいねぇ」



こういうのも全然平気。
ただ困るのが恋愛系のこと。



「本当はお亮と付き合ってるんですよね！？」


「付き合ってないよ」



「誰が本命なんですか！？」


「誰でもないよ」



笑顔で返答すれば、矢継ぎ早にもっと質問してくる。



「じゃあ菅田君ですか！？」


「違うよ」



「ジャニーズの誰かですか！？」


「それも違うかな」



「誰がいいか悩んでるんですか！？」


「みんな仲良しなだけで、そういうんじゃないよ」



でもこうやって喋る時間は少なくて、すぐにスタッフさんに誘導されていく。



「ありがとう、またね」



どの人にも最後はそう言って手を振って。
本当にまた、こうやってファンの人達と会える機会があるといいなと思った。

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