職業：女優４

お祝いします ページ26

亮ちゃんが第１０回TAMA映画賞の最優秀新進男優賞を受賞した。
スケジュール的にも役柄的にも、大変だったことも頑張ってたことも知っていたから、受賞を知った時は私も自分のことみたいに嬉しかった。
本当はすぐにでもお祝いしたかったんだけど、普通にするのはつまらないなぁと思ってしまった私。
亮ちゃんには



『おめでとう』



とだけLINEを送って、すぐに別の人に連絡をした。









「Aー」



後日、仕事終わりに私の家にやって来た亮ちゃん。
いつもならここですぐに返事をするんだけど、今日は家中の電気を消して黙って隠れている。



「Aー？」



どんどん近付いてくる声と足音。



「寝てんのか？」



ぶつぶつと独り言を言いながら亮ちゃんがリビングに入ってくる。
壁のスイッチでパッと電気が付くと



「……え！？」



と驚いたような亮ちゃんの声。
その原因はテーブルの上に並べられた沢山のお花とお酒達。
日本酒、焼酎、ワイン、カクテル、ビール等々。
スーパーやコンビニで買えるお手軽なものではなくて、国内の有名なもの、希少なものや海外から取り寄せが必要な高価なものなんかを集めた。
所謂、普段あんまりお目にかからないやつ。
そこにいろいろなお花を飾って、ちょっとしたディスプレイ仕立てにしてみた。
まだ理解出来ていないんだろう、固まって動かない亮ちゃんにこっそり近付いて後ろから抱きつく。



「亮ちゃん！」


「うわ、A！？ ねぇ、何これ？」


「プレゼント的な？」


「プレゼント？ 何の？」


「第１０回TAMA映画賞、最優秀新進男優賞おめでとう！！」



亮ちゃんから離れて正面に回って、目を見て伝える。
このサプライズの為に、LINEではちょっと素っ気なくしてしまったから。
直接、心を込めてお祝いの言葉を伝えたかった。
私の言葉に亮ちゃんは



「ありがとう」



と、見惚れるくらいの満面の笑みを浮かべた。

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