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「以前お話したこと、覚えてらっしゃいますか? 噂が迷惑だとか、困るといった話」
「覚えて、ます」
「あれ、私が困るとか迷惑だとか思っているということではないんです。私なんかと噂になって、吉沢さんが困ると言ったんです」
「え、俺?」
「はい。ですが言葉足らずでうまく伝わらなかったようで。すみませんでした」
誠心誠意頭を下げれば、彼が静かに声を発する。
「……あの」
「はい?」
「Aさんは、迷惑ではなかったんですか? 俺と、その噂になって……」
「迷惑だと思ったことは1度もありませんから、安心してください」
なんでこんな噂が、って疑問には思っているけど。
「そう、だったんですか……。俺、てっきりAさんに迷惑をかけているんだと思って……」
「すぐに訂正すればよかったんですが、会社でも避けられていたようですし、連絡先も存じ上げなかったので」
「いや、いいんです。俺こそ、すみませんでした」
誤解が解けて、やっと彼は前と同じように笑ってくれた。
その笑顔に安心して、私も自然と笑顔になる。
重苦しい雰囲気もなくなって、以前より少しだけ軽くなったお互いの空気。
これまで当たり障りのない会話しかしてこなかった分、プライベートなことを話すのは初めてで。
こうやって2人で食事をするのは何度もあるのに、お互い知らないことだらけだったねって笑って。
今まで話題にも上らなかった、連絡先も交換して。
失礼な話、初めて吉沢さんとの食事が楽しいと思った。
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リオ(プロフ) - ねのさん» ねのさん、コメントありがとうございます。吉沢Sideも公開できるように頑張ります。 (2018年10月21日 19時) (レス) id: 17091ee08c (このIDを非表示/違反報告)
ねの(プロフ) - 完結おめでとうございます!ぜひ、別side編も読んでみたいです (2018年10月21日 1時) (レス) id: 9139ef9cf8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リオ | 作成日時:2018年10月14日 15時