職業：女優２

お兄ちゃん不足 ページ37

「……足りない」


「え？」


「足りない足りない足りないー！！」


「うるさいな、だから何が？」


「お兄ちゃん」


「……あぁ、またか。お前最近そればっかりだな」


「だってけんたろーくんが足りないの！！！」



大好きな大好きなお兄ちゃんの坂口健太郎君。
定期的に会いたくなるんだけど、最近忙しくて会えていない。
だからここ最近、ずーっとこればっかり言ってる気がする。



「電話すれば？」


「電話じゃなくて会いたいの！！」


「だから電話して会いたいって言えばいいだろ」


「……けんたろーくん忙しいもん、迷惑かけたくない」


「お前他の俳優にはワガママ言いたい放題なのに、坂口君にだけはしおらしいのな」


「けんたろーくんに嫌われたくない、嫌われたら生きていけない」


「はいはい」



みーちゃんは、私の話を聞いてるのか聞いていないのかわからないくらい適当な返事をした。



お仕事の忙しい健太郎君。
疲れてるだろうし、絶対に迷惑をかけたくない。
でも会いたい。
どうしようもなく会いたい。
携帯のアドレス帳から健太郎君の名前を引っ張り出して電話しようか悩んでいると、コンコンと楽屋をノックする音がした。

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