稲荷の狐と夜叉の花姫2【まふまふ】 (ページ7)

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51話ページ7

緑色の瞳が面白そうに細められる。それを見て私は確信した

貴「いくら貴方がここの主でも、鬼となった神が見抜けるでしょうか。
それに見抜けたとしても、今の私に神様と呼ぶのはいささか無礼が過ぎます」

渉「嫌でした？」

貴「いいえ、不自然だと思いました。貴方は街で見た限り、他への配慮は慎重に行っていました。だからこそ意味がわからなかった」

そこで区切り、彼と目を合わせた

貴「そして神をさらったにも関わらず、慌てている節が全くない。貴方がこうしなければならなかった理由は、キツネの里との交渉材料ではありません

私が花の神だと、知っているのでしょう？
それを知ってるのは社の彼らだけ。そらるさんから情報を得られる貴方が、キツネの里と仲が悪いわけないんです

……そろそろ申したらどうですか。神の力を貸せ、と」

やけに里の成り立ちを詳しく語ったのも、私の同情を引くためだろう。そらるさんが加担していたかどうかはわからないが、私を狙ったのも偶然ではない

挑発するような物言いになってしまったことは反省している。しかし、誰かに踊らされる趣味は無い

私が話を終えると、彼はおどけて手をパンッと合わせた

渉「いやー、お見事。そらるさんからは箱入りって聞いてたんですがね。ご慧眼、感服します」

貴「世辞は結構です。それで、タヌキの里の主様。ご回答を」

渉さんは観念したように両手を上げ、降参のポーズをとる。食べ終えた食器を片付けさせると、数枚の紙を持ってこさせた

目を通して確認すると、また私の方に向き直る

う「改めて、タヌキの里の主をやらせてもらってます、うらたぬきと言います。渉ってのは一応本名なんだけど、呼ぶ人はほとんどいない。
好きに呼んでもらって構わないけど、人前では『うらたぬき』の方でお願いします」

謀ってすみません、と頭を下げる

う「貴女の言うことは大体当たってます。だけど、キツネの里と交渉するために連れてきたというのは本当」

その言葉に既視感を覚える。確か……坂田さんが言っていた

貴「当人同士の仲が良くても、立場的には敵対しているのですね」

う「その通り」

議題は里の妖気の乱れ、こちらで調べていたことだ。本来なら年に一度行われる挨拶で述べるのだけど、事は急を要したらしい