稲荷の狐と夜叉の花姫2【まふまふ】 (ページ6)

今日:2 hit、昨日:6 hit、合計:2,093 hit

50話ページ6

おとぎ話のように語られているが、これらは全て実際にあったことなのだろう

お茶を一口飲み、質問をぶつける

貴「キツネの里でも聞きました。ここは夢の中ということですか？」

渉「そうでもあるし、そうでもないと言える。地盤はきちんと現実だが、建物とか立派に見えるモンは夢が多いな。洋菓子で例えるなら、スポンジケーキが現実で、クリームが夢って具合」

つまり、ただの大きい石を豪華な椅子に見せかけているということか。どうしてそんな面倒なことを

疑問が顔に出たのか、すぐに渉さんが答える

渉「本当に立派な建物を造ると、生きてる人間まで迷い込んでくるからな。実際たまにあるんだ」

霧や幻術で入口は誤魔化しているものの、やはりたまに入ってきてしまう人はいるらしい。後々困るので、そういう場合は記憶を消してから帰すそうだ

貴「ここのご飯も砂や泥水ですか？」

渉「いや、食べ物は別。ここではあやかしも幽霊も実体化するからな、変なもの食べるとお腹壊すんだよ」

話を聞くと、普通に食べられるようになったのはここ数十年のことらしい。いつだったか狐の里の主が豊穣の加護を持って帰ってきたそうな

渉「神に手出すと祟られるから皆手出さなかったのにな。ただその神は例外にいいやつだったらしくて、譲り受けてきたそうだ。あの時は助かったな……」

加護があるのとないのとでは、土地の恵みが大きく違う。あやかし如きに大事な力の一部を授ける神様などいなかったのだろう。ぱくり、と白米を一口頬張る

貴「里の在りようや成り立ちについてはわかりました。ですが、重要なことを話しそびれていませんか？」

渉「ここに連れてこられた訳だろ？」

居住まいを正して、少し真面目な顔になって彼が語り出す

渉「気づいちゃいるだろーが、今キツネの里を中心に、霊力の流れが妙なんだよ。話でも聞きたいとこだが、キツネと俺たちは仲が悪いからな。素直に話さねぇ」

そのため強引だが、キツネの里から引き抜いて人質にし、交渉することになったと……ふむ

渉「それが神様で鬼ってのは驚いたけどな。てっきりただのお嬢さんだと……」

貴「渉さん。私は世間知らずですが、馬鹿ではありませんよ」