48話 ページ4
夜叉、とはそのまま鬼のことだ。そして一般的に、夜叉の半身は菩薩だと言われている
地蔵菩薩とは、おなじみの貧しい人を守るお地蔵さんだ。しかし、それだけでは無い。菩薩は夜叉でもある
世界の均衡は、『対』によって保たれている。これは道教で信じられている
砂漠の方で有名な破壊の神シヴァは、破壊と再生を司る。これはそのまま道教の考え方にも……まぁ、詳しいことはいいや
ともかく半身を返せ、ということはこちら側の菩薩、つまり神をよこせということなのだろう
それが意味することとはつまり、
ま「うちの主を出せってことですね。一体なんのために？」
そ「わからん。……いや、気の流れのことかもしれないな」
ま「まさか、あっちにも？」
そ「可能性としてなくはない」
まふはまふで独自に調査を進めていたのだろう。「そんな、前は…」とブツブツ呟いている。俺はこっそり冷や汗をかいた
そ「ひとまず、話し合いの場は必要だな。悪いけど主の名代として行ってくれないか」
ま「浄化の問題なら、ボクよりそらるさんの方が適任じゃないですか？」
そ「……今のお前は、浄化の力を持たないだろ。何かあった時に対処出来るか？」
我ながら痛いところを突いたと思う。まふが所在なさげに俯く。ただ、今自分が動くとまずい
フォローではないが、理由としてもう1つ提示した
そ「お前の方が名代としてはいいだろ。……俺よりも」
主の直属、というか代わりはまふまふなのだ。俺は手伝いのような立場で、実質的な代役は務まらない
神使にはなれても、神にはなれない。そういう生まれなのだから
まふは悔しそうに唇を噛んで俯くと、「わかりました」とか細い声で言って去っていった。いろいろと準備も必要だからな
それにしても、Aも運の悪い。体面を保つためには仕方ないのだけど、巻き込まれた彼女にとっては災難としか言う他ない
それにしても、タヌキも動いたか
そ「……主、」
いつ戻ってくるんだ。そもそも戻ってきてくれるのか
貴方は、俺たちに……俺に何をさせる気なんだ。そう言葉にできないのが辛い
弱音を吐いていい立場では無い。けれど、主
病めるモノだったのは、民だけではない。そのことを貴方は忘れたのか
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作者名：笹乃葉 | 作成日時：2023年7月5日 18時
