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切り出したのは倫也さんだった。
「昨日のこと、なんだけど…撮影の打ち上げで飲んでて。勿論、スタッフさんとか演者含めて何人かで。それから、2軒目行こうってなって…Aちゃんは気づかなかったと思うけど、あの時は何人かで移動してる時で…」
倫也さんが、一つひとつ言葉を選んで話してくれているのがわかる。
いつもの優しい顔が、困ったように、辛そうに歪んでいる。
「…あの子は、共演した女優さんで…結構酔ってたみたいでさ、」
「…酔ってたら、腕を組んで歩くんですか…?」
私から出た声は少し震えていて、それでいて自分でも驚くくらい冷たいものだった。
「それは…ごめん。俺が軽率だった。」
責めたいわけでも、謝らせたいわけでもないのに、自分で思っていたより私は卑屈な人間みたいで。
「綺麗な人でしたもんね。倫也さんの隣には、やっぱり私なんかよりああいう女性の方が…っ」
言ってはいけないと自分が1番よくわかっていたはずなのに。
「Aちゃん…それ本気で言ってんの?」
少し鋭くなった語気に顔を上げると、倫也さんは真っ直ぐ私を見つめていた。
しっかり私を捉える瞳は、今にも吸い込まれてしまいそうで。
こんな顔をさせてしまっている自分が凄く情けなくなった。
やっぱり、私じゃ倫也さんに釣り合わない。
目の前の彼を見て、確信した。
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高木(プロフ) - emiさん» 素敵なお言葉をありがとうございます。まだまだ書きたい話があるので、まだまだお話は続くと思います。話数の割に展開が緩やかですが、気長に見守っていただけると幸いです。今後とも宜しくお願い致します! (2020年6月2日 6時) (レス) id: 34107c5216 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - すごく良かったです。一気に読んでしまいました。水族館の帰りの告白からのところ、好きでした。あと、喫茶店で、主人公の本音が溢れてしまうところ泣けました。どんどん読み進めてしまって、もったいないことしたかも。。。って少し後悔。でも、我慢できなかった〜。 (2020年6月2日 4時) (レス) id: ce60033505 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:高木 | 作成日時:2020年5月31日 9時