きっと、何度でも【岩谷翔吾】 (ページ9)

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腑に落ちたページ9

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翔吾side

『うん、もちろんいいよ。何？』

日誌に戻した視線をまた正面に戻した。

端っこの1番後ろの席に俺が座って、その前の席にAちゃんが壁を背もたれにして座る。
横の開いている窓から吹いてくる風が、Aちゃんの長い綺麗な黒髪を揺らして

青春の1ページを切り取るなら、まさに今だろう
そんな瞬間だった。

翔吾「…好きな人とか、おる？」

『え…私？』

翔吾「うん」

『…いないけど、』

翔吾「えっほんまに？」

『うん』

翔吾「めっちゃ意外」

『そうかな？』

翔吾「彼氏おるやろなって思ってた」

そう言うとちょっとだけ、返事に困ったような顔をしたから
素直に言いすぎたかな、と少し反省した。

『…なんでそんなこと聞くの？』

翔吾「Aちゃんはなんで聞いたん？俺に」

『何となく、気になったから…？』

翔吾「それと一緒」

『…何それ、』

なんでって、そんな理由なんて1つしかないやん

腑に落ちてないような顔をして、きっと何も分かってない
今、俺の目の前にいるAちゃんのことが

翔吾「気になるから」

真っ直ぐ見つめてそう言うと、彼女の綺麗な瞳が少しだけ大きくなって
今度は彼女の方から目を逸らした。

翔吾「…どした？」

『いや、何でもない』

翔吾「じゃあ、こっち見て？」

「…何ですか、？」

翔吾「理由、これで分かってくれた？」

『…うん。…続き、私書くね』

そう言って小さくうなづいた後に、俺の方に向いていた日誌を回転させて、続きを書き始めた。

続きといっても残り少しで、最後まで書き終えるのに時間がかからなかったからか
自然とお互いに無言だった。

『よし、終わりー』

翔吾「ありがと、じゃあ出すか」

『うん』

日直の仕事を全て終えて、荷物と日誌を持って席を立つ。

椅子を机の下にしまっている時に、彼女の小さめの声が聞こえた。

『…でも、わたし、』

翔吾「ん？」

『好きな人はいないけど…気になる人ならいるかな』

翔吾「え？」

『うん…あっじゃあ、これ出しとくね。また明日』

最後に、華麗に爆弾を落として去っていく彼女の背中
確か、ボーッと見つめていたと思う。