きっと、何度でも【岩谷翔吾】 (ページ11)

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失いたくないページ11

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翔吾side

図書室の閉館時間ギリギリまでいたからか、気づけば2人以外の人は1人もいなくなっていた。

『翔吾くんの勉強もあるのに…ごめんね、いっぱい教えてもらっちゃって』

翔吾「協力した方がええやん、また俺にも教えてよ」

『翔吾くんに教えれることあるかな…』

そう言いながら、しまいかけの教科書をパラパラとめくっている。

彼女と横並びで座っている感覚
ちらっと隣を見ると見える彼女の横顔

それが懐かしくて
別れ際、名残惜しくて仕方なかった。

『…なんか、ついてる？』

翔吾「ん？」

『私の顔』

翔吾「あ、いやついてないよ」

だからきっと無意識に見すぎてたんだろう。
必死になって返事してるのも、恥ずかしかった。

『よし、今日の勉強は終わりだね。翔吾くんありがとう』

翔吾「こちらこそ勉強になった」

『ほんと？』

翔吾「教える方、結構勉強になるよ」

『そっか、それなら良かった』

帰り道、隣を歩きながら思うこともずっと一緒だった。

このまま、バイバイして終わるのは嫌
彼女の隣を歩けるこの帰り道を、俺はどうしても失いたくなくて

翔吾「ねえ、」

『ん？』

翔吾「前言ってた、気になる人ってどうなった？」

『…あー、んー…』

そう聞くと、急に黙り込んだA
しばらく考えて、彼女の口から出た一言は

『どうにか誤魔化そうと思ったけど…うん、言えないよ』

翔吾「…そっか」

『…翔吾くんにだけは、言えない』

その瞬間、雰囲気が一気に変わった

なんでこんな遠回しなことしてるんだろって、急におかしくなって
思わず、笑みがこぼれた。

そしたらAも、“なんで笑うの”って言いながら笑い始めて
意味もなく、2人で笑って

翔吾「はぁー…、俺Aのこと好きやわ」

『…っ、』

翔吾「もし良かったら、俺と付き合ってほしいです」

俺が思い描いてたような告白じゃなかったけど

理想通りに上手くできないのも自分らしい気がしたから

『私で、いいの？』

翔吾「Aじゃなきゃ嫌」

『…よろしくお願いします』

翔吾「えっマジで言ってる？」

『うん、マジで言ってる』

翔吾「…これから彼女って紹介してもいいの？」

『…うん。私も、翔吾くんが好きです』

恥ずかしそうに顔を落とした彼女のことはしばらく頭から離れなくて

今日のことだけはこの先一生忘れられないだろうと
大袈裟じゃなく、そう思った。